第4章 理想の衝突
第13話 白と白のコントラストと
次に四人が向かった街は、これまでに状況を改善させた後の街ほどでは無かったが、比較的平穏な日常が送られていた。これまで荒んだ街ばかり見てきていた四人は少し安堵した。
アビーは「フレトスにもこんな平和な街があったんだね。」と笑みをこぼす。
「そうだな。全ての街の人々が苦しんでるわけじゃないと分かって安心したよ。」と言って一息つくアルフ。
しかし、しばらく街に滞在して様子をよく見てみると、街の一定の場所を境に住民の交流がないように見えた。それが気になったローナは近くを通った若い男に尋ねてみた。
「ちょっといい?この街……何かトラブルでも起きてるの?」
若い男は肩をすくめながら口を開いた。
「この街のリーダーは最近まで一人だったんだ。だけど、その人が急病で亡くなってしまって、息子三兄弟のうち次男と三男がその跡を継ぐって意地になってさ…喧嘩の末、何故か北を次男が、南を三男が統治する形で分断されたんだ。馬鹿馬鹿しいよな。」
男が去った後、困惑を隠せなかった四人だったが、住民が暮らしやすくなるように、この街の問題も解決していこうと考えた。
アルフとギルはついため息を漏らす。
「まるで子供の喧嘩のようだが……街の人々が困っているのは見過ごせないな。」
「そうだな。理想は二人を説得して仲直り、街を兄弟二人で治める……だが、二人とも人間性に問題があるように思える…。」
そんな時、「次男と三男が喧嘩してるって言ってたわよね。長男はどうしたのかしら?」とローナが言ったことをきっかけに、街の住民に前統治者の長男について聞き込みを行うことにした。その結果、長男は父に似て真面目で住民からの信頼は厚いが、慎重が行き過ぎて消極的な性格であることが分かった。
四人は、街の問題を解決するために、まずはその長男に会って話を聞こうと考えた。彼がこの街の平和の鍵を握っている可能性が高いと感じたからだ。
アルフは皆に提案する。
「まずはその長男に会ってみよう。彼が消極的な性格だとしても、兄弟の間を取り持つ役割を果たせるかもしれない。」
少し沈んだ表情だったアビーは顔を上げた。
「うん、彼が街をまとめる助けになるかもしれないし、何か方法が見つかるかもしれない。」
四人は住民から教えてもらった長男の家を訪ねた。家は街の端にあり、目立たない場所にひっそりと建っていた。アルフが扉を叩くと、中から物静かな男性が現れた。彼がその長男、エリオットだった。
「初めまして。君がエリオットだな。俺たちはこの街の問題を解決したいと思っている旅の者だ。今、この街に起きている事について話を聞かせてくれないか?」
アルフが切り出すと、エリオットは少し驚いたような表情を見せたが、やがてゆっくりと頷いた。
「どうぞ……入ってください。」
エリオットは静かに答え、四人を家の中に招き入れた。
座って話を始めると、エリオットは自分が兄弟たちの争いを止めるべきだと感じていたが、彼らの激しい性格や街の状況に圧倒され、何も行動に移せずにいたことを打ち明けた。「私は父のように力強くはない。兄弟たちをまとめる自信もないんです……。」
ローナとギルが優しく声をかけた。
「でも、あなたには父親譲りの信頼感がある。それがあれば、きっと弟たちにも影響を与えられるはずよ。大切なのは、最初の一歩を踏み出す勇気なんじゃない?」
「俺たちも元々は信じることなんてできないような状況だった。だが、理想を行動に移して、これまでに二つの街を変えてきた。あんたも本気になればやれるさ、エリオット。」
エリオットは少し考え込み、やがて決意を固めた表情で言った。
「……わかりました。私も街のために弟たちと話し合ってみます。どうか、力を貸してくれませんか?」
アルフたちは全員で頷き、エリオットと共に次男と三男を説得するための準備を始めることにした。街を二つに分けるという不毛な争いを終わらせ、再び住民たちが平穏な日常を取り戻せるようにするため、四人はエリオットを中心に行動を起こす決意を固めた。
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