危険

「まずは、自己紹介ね。私の名前は二色花よ。救護委員長をやっているわ。ほら、次は貴女。」

女の子は少し俯いた後、胸を張って話し始めた。

「私の名前は松本真那と言います。兄は総司と言います。私たちは中央劇団で役者をしています。」

「知っているわ。去年は月に一回は鑑賞しに行っていたから。お兄さんの演技はとても素敵だったのを覚えているわ。次はそこの大柄の子。」

多朗は少し肩を震えさせたが背筋を伸ばしてから口を開いた。

「俺の名前は林多朗と言います。ただの高校生です。こちらは連れの深財真です。」

「林くんに深財くんね。深財くんのほうは水里先輩から聞いているわ。よし!自己紹介もすんだことだし、事情を聞かせてもらいましょうか。どうして、裏路地なんかにいたのかしら?」

にこにこと笑いながら二色先輩は質問した。

僕と多朗は視線を交わした後、僕は意を決して話した。

「僕たちは友達と会った帰りに裏路地から悲鳴が聞こえたので、悲鳴のする方向に向かったんです。」

「俺はこいつを追いかけました。現場についた時に救護に通報したのも俺です。」

二色先輩は僕たちの話に強く頷きながら聞いていた。

「君たちの話はよく分かったわ。じゃあ、次は貴女よ。どうして、裏路地なんかに入ったの?」

二色先輩の言葉にさっきの出来事を思い出したのか、少々涙目になりながらも松本さんは喋り始めた。

「私たちはその、ぐす、あの、この前の事件で花蓮ちゃんが変な毒物で殺されたって聞いて、ひっぐ、あの花蓮ちゃんが毒を入手できるはずがないと思って、裏だったら分かるんじゃないかってお兄ちゃんと相談して、奥まで行ったら危ないから表に近いところで情報を探ろうとして、あの人たちに襲われて、お兄ちゃんが殴られて、ひっぐ、あっぐ、怖くなって、自分が調べようって言わなかったら、お兄ちゃんがお兄ちゃんが、うううううう。」

「大丈夫よ。お兄ちゃんはちょっと重傷だけど数日寝ていればまたお芝居は出来るようになれるから。」

二色先輩は松本さんの背中をさすりながら慰めて落ち着かせた。

「でも、肋骨が折れている可能性があるんですよね?どうして、数日でよくなれるんですか?」

僕は不思議に思ったことを尋ねた。

二色先輩は僕のほうに向いて、にっこりとして答えた。

「それはね。やったのがオーガで私たちが救護委員会だから。詳しく説明すると、この都市に話になっちゃうんだけどね。そもそも、この学園都市は能力者やら亜人なんかの生徒が多く在籍しているのは知っているわね。そして、その中でも医療関係に利用できると考えられる生徒もしくは患者を救いたいって考える生徒が救護委員会に入るの。だから、ケガを直すことができる能力を持った子が救護委員会にいるから、大抵の生徒はどんなケガを負っても直して見せるわ。しかも、異能力者の医療に関する実益の調査も兼ねているから資金も充実しているのよ。二つ目のオーガに関してだけどあの人は表の人間を死ぬまで殴らないし裏に引きずりこまない人だからね。普通、演劇の子が裏になんか入ったりしたら秒で闇オークションにかけられるらしいわ。噂だけどね。でも、オーガは表の人間には決して手を出さないわ。今回は裏に迷い込んだ兄弟を追い返すついでに痛い授業料を与えたって感じかしら。指定暴力クラブのトップでもあるからいい人ってわけでもないけどね。そういえば、水里先輩もオーガとやり合って、メアドを交換したらしいけど私に真偽は分からないわ。」

姉さんとオーガとの関係にとても驚いたが、二色先輩の真意は理解することが出来た。

「それと、あなた達はあまり芦渡さんの事件に関わりすぎないほうが得策よ。水里先輩と茜先輩が捜査中に怪しい集団に襲撃されたんだから。今回の事件はどこか生徒の手に負えない匂いがするのよ。」

二色先輩はとても真面目な顔になって忠告してきた。

「はい、分かりました。」

僕たちは頷くことしかできなかった。



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