襲撃前 上
風紀委員会本部に戻ってくると、そこは戦場と化していた。
「烏の居場所はまだ発見できないのか!」
「能力力場の歪みは?!」
「許可証が下りた!がさ入れ行くぞ!場所は旧第7小学校跡地にある工場だ!」
「警察との連携はどうなってる!」
「藤村さん知りませんか?」
「生徒会の一部が変な動きをし始めた!大田!見張りに行け!接触はしなくて良い!ずっと張り付いておけ!」
「情報!解析まだ?!」
「いま、50%!少ないんだよ!情報が!」
「封じ薬の回収が追い付かない!もう少し人員を増やしてくれ!」
「うっさい!もういないよ!」
ぎゃーぎゃー、ギャーギャーと言葉が飛び回っている本部を見ると動物園のほうが読書に最適だなと思ってしまう。
そんなポツンと突っ立ている私を無視して委員長は声を張り上げた。
「前田!前田はいるか!」
誰よりも大きな声で叫んだからか件の風紀委員の耳に届いた。
人のごった煮から一人の少女が這いだしてこちらにやって来た。
目の下には隈ができており、制服もヨレヨレになっていた。
「どうしたんですか。委員長。」
その覇気のなさに委員長は少しドン引きしながら用件を伝えた。
「いやー。今から山本の部屋で宝探しをしようと思っていてな?許可証を持っているお前も行くかと尋ねたかったんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、前田は目がとても輝きだした。
「はい!行きます。少し待っておいてください。許可証を取ってくるので!」
そう言うと茶髪の子犬は獰猛な大型犬の群れに突撃していった。
少し経って、人の荒波から帰ってきた偉大な小人の制服はさらにヨレヨレになっていた。
「焦る気持ちを押し留めて下でアイロンを掛けてこい。」
「委員長、急がないと証拠が無くなるかも知れないんです。そんな暇はありません。」
「では、私たちだけで行くぞ。そんな恰好の奴が風紀委員とあっては風紀委員会の印象が悪くなる。自分たちの風紀も正せないのかってな。今すぐ、アイロンを掛けてこい!上司命令だ!」
さすがに委員長の喝が効いたのか小走りで階下に下りていった。
委員長は溜息をついた。
「正義感も強いし、情熱もあるんだが如何せん自分の身の周りが疎かになっている。風紀委員は風紀を守ることが重要でその中に身嗜みが入っていることを理解してくれるとありがたいんだがな。」
委員長はヨレヨレの子犬が走っていった廊下の先を見つめていた。
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