第8話 もしかして?

「てめえも合格してたのかよ…。」



 見事王立学校に合格した史彦は、入学初日にイザムに声をかけられた。



 それはこっちのセリフだ…。


 まさか、俺に完敗したイザムが合格しているなんて……。



 まあ、試験官も勝敗が全てではないと言っていた。イザムも俺にボロ負けだったが、魔力の高さが評価されたのだろう。



 それにしても人格に問題ありだろ。



 今日もこの学校の生徒ではない女たちを侍らせているし…。ここ、一応学校だよな。



 なんでこんなやつを合格させたんだ…。



「あれ?アベルやったっけ?やっぱりあんたも合格してたんやなぁ!」



 そう声をかけてきたのは、ティナだった。今日のティナは、史彦もそうだが学校指定の制服姿だ。



 明るい緑色を基調とした制服だが、けっこう日本の学生っぽいデザインだ。生足がとても眩しいぜ。

 

 ドキドキ…。



 ティナが近づいて来ると、なぜかイザムは下を向き、離れていった。



「あれ!あの男。あんたに負けたのに合格してるやん!えらい女好きやし、ほんま、ムチャクチャやで…。あの垂らし前髪も好かんわ…。」



「垂らし前髪…。そんなことより、ティナさん、これからよろしくお願いします!」



「こちらこそ、よろしくな!てゆうか、お互い呼び捨てでいいんちゃう?同じ転生者なんやし、仲良くしようや。」



 ああ、なんていい子なんだ…。異郷の地で出会い、こうやってどんどん仲良くなっていき、いずれは…。



 でも、何か喋り方とかが聞き覚えあるような気がするんだよな…。


「あれ、ティナさん、いや、ティナ…手に何持ってるの?」



「ああ、これさっき道で拾った、空の麻袋。」



「道で拾ったんだ…。あれ、そういえば、カバンに大量の麻袋がはみ出そうになってるけど、それどうするの?」



「どうもせえへんよ。家に置いとくだけ。だってもったいないやん。」



「もったいないやんて…。何でも集めてたら家の中ゴミ屋敷になんで…あ。」



 思わず関西弁が出てしまった。元いた世界で何度もこのやり取りをしていたのでつい…。



 史彦の言葉を聞いて突然顔色を変えたティナは、史彦の顔を覗き込むように見つめた。



 史彦も同じようにして、ティナ…いや…その女の顔をまじまじと見つめ返した。



 側から見ると、2人で近距離で見つめ合い、いい感じなのかと思えるが、実際にはそこにロマンティックな雰囲気は微塵もなかった。



 何でもかんでももったいないと言っては拾って持ち帰ってしまう、そんなもったいないモンスターに俺は心当たりがあった…。



 そして事あるごとにメチャクチャやでとグチる口癖…。

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