7章 泉の試練と月の囁き
第27話 迷いの泉、月光樹、そして影の接近
「カイトさん、右前方、強力な魔物の気配が二つ!」「了解です! ララさん、左翼の撹乱をお願いします! ソフィーリア、回復支援を!」
僕とBランクパーティ「銀の百合」との即席の共闘は、想像以上にスムーズに進んでいた。オーガの群れという最初の危機を乗り越えた後、僕たちは互いの目的――僕の月光樹探索と、彼女たちの森の異変調査――が、森の奥深くへ進むという点で一致していることを確認し、協力して探索を続けることにしたのだ。
ララさんの斥候能力と僕の【索敵】【危機察知】スキルを組み合わせることで、危険な魔物の存在を早期に察知し、有利な状況で戦闘を開始できるようになった。ルーシィさんの的確な指揮と卓越した剣技、ララさんの俊敏な動きとトリッキーな短剣術、そしてソフィーリアさんの絶え間ない回復・支援魔法。Bランクパーティの実力は伊達ではなく、彼女たちの洗練された連携は、僕にとって最高の学びの場となった。
僕自身も、ただ守られているだけではなかった。【剣術(応用)Lv.3】や【身体強化(中)Lv.2】といった戦闘スキルはもちろん、【構造解析】で敵の弱点を見抜いたり、【鑑定】で未知の植物や鉱石の情報を共有したり、【自己治癒】と【持久力向上】で驚異的なタフネスを発揮したりと、僕の多様なスキルがパーティの中で予想外の形で役立っているようだった。
「カイトさん、本当にすごい…! その、敵のどこが弱いか分かるの、どうやってるの?」とララさんが目を輝かせる。
「あなたのその自己回復力とスタミナも、並外れていますわ。どんな訓練を積まれたのですか?」とルーシィさんも感心したように尋ねてくる。
「カイトさんがいてくださると、私の負担も軽くなりますわ。ありがとうございます」とソフィーリアさんも微笑んでくれる。
彼女たちからの素直な評価と信頼は、僕の自信をさらに深めてくれた。戦闘や探索を通じて、スキルレベルも着実に上がっていく。
【連携(初級)Lv.1】→ Lv.2
【鑑定(植物)Lv.1】→ Lv.2
【耐瘴気(低) Lv.1】 (New!)
森の奥へ進むにつれて、瘴気のような淀んだ空気が濃くなっていくのを感じたからか、新たな耐性スキルも身についたようだ。
しかし、森の状況は依然として深刻だった。魔物たちは明らかに数を増し、凶暴化している。時には、僕たち四人が協力しても苦戦するような、強力な個体や群れに遭遇することもあった。そして何より、あの不気味な「影」の気配が、常に僕たちの周りに付きまとっていた。
「…やっぱり、いるよね? ついてきてる…」
ララさんが、周囲の気配を探りながら不安そうに呟いた。斥候である彼女にも、その巧妙に隠された気配が感知できるようになってきたらしい。
「ええ。複数いますわ。直接的な敵意は感じませんが…」とルーシィさんも眉をひそめる。
「私たちを、どこかへ導こうとしているような…そんな奇妙な動きを感じますの」とソフィーリアさんが付け加えた。
ソフィーリアさんの言う通りだった。僕たちが森の奥へ進もうとすると、影の気配は薄れ、まるで道案内をするかのように先行する。逆に、危険そうな脇道へ逸れようとしたり、引き返そうとしたりすると、プレッシャーが強まり、無言の圧力をかけてくるのだ。
「罠かもしれないわね…」とルーシィさんが警戒する。
「でも、他に手がかりもないし…奴らの意図を探るためにも、少しだけ乗ってみるしかないかもね」とララさんが言う。
僕も同意見だった。このまま闇雲に進むよりは、彼ら(?)の誘導に乗りつつ、最大限の警戒を怠らない方が、まだ可能性があるかもしれない。
僕たちは、影の気配に細心の注意を払いながら、彼らが示す(と思われる)方向へと進んでいった。道中、【鑑定】スキルで調べてみると、木の幹に奇妙なマーキングが施されていたり、明らかに不自然な形で植物が配置されていたりと、人為的な痕跡がいくつか見つかった。やはり、誰かが意図的に僕たちを導いているのは間違いないようだ。
どれくらい進んだだろうか。瘴気が嘘のように晴れ、空気が澄んでいくのを感じた。そして、木々の切れ間から、柔らかな白い光が差し込んでいるのが見えた。
「これは…?」
僕たちは光が差す方へと、吸い寄せられるように進んでいった。
そして、たどり着いたのは…息を呑むほど美しい場所だった。
森の奥深くに、こんな場所があったなんて。
霧が立ち込め、幻想的な雰囲気を醸し出す、広大な泉。水面は鏡のように静まり返り、周囲の木々や空を映し出している。そして、泉の中央には、緑豊かな小島が浮かんでおり、そこに一本の巨大な古木が聳え立っていた。
その古木は、まるで月光そのものを吸収して輝いているかのように、幹も枝も葉も、全てが淡い白銀色に輝いていたのだ! 清浄で、強力な魔力が、その木から放たれているのを感じる。
「まさか…あれが…!」
僕は声を失った。伝承にあった、月の光を浴びて育つという伝説の木。
「月光樹…!」
ルーシィさんも、驚きと畏敬の念を込めて呟いた。ララさんとソフィーリアさんも、その神秘的な光景に言葉を失っている。
ついに見つけた。ボルガンさんとの約束の素材。最高の剣を作るための、第一歩だ。
僕は興奮を抑えきれず、泉のほとりへと駆け寄ろうとした。しかし――
「待って、カイトさん!」
ルーシィさんの鋭い声が、僕を引き止めた。
見ると、泉の周囲には、等間隔に奇妙な石碑がいくつも立ち並んでいた。表面には、見たこともない古代文字のようなものがびっしりと刻まれている。そして、その石碑群が、まるで泉全体を守る結界のように、見えない壁を形成しているような…そんな威圧感があった。
「これは…ただの泉と木ではなさそうですわね…」ソフィーリアさんが、杖を構えながら警戒する。
そして、僕たちが月光樹に近づこうとした、その瞬間。
ザワワ…
静かだった泉の水面が、突如として波立ち始めた。そして、泉の中央、月光樹の根元から、水しぶきと共に、巨大な何かが姿を現そうとしていた!
それは、水の精霊か、古代の守護者か、あるいは…。
同時に、僕たちをずっと監視していた、あの「影」の気配が、すぐ近くで強まったのを感じた! 複数いたはずの気配が、今は一つに収束し、明確な意思を持ってこちらに接近してくる!
(来る…!)
月光樹という目標を目の前にして、僕たちは新たな、そしておそらくはこれまでで最も強大な謎と脅威に直面することになったのだ。
果たして、僕たちは月光樹の枝を手にすることができるのか?
泉の守護者、そして謎の影の正体とは?
深淵の森の異変の真相は?
僕たちの本当の戦いは、まだ始まったばかりなのかもしれない。
白銀に輝く月光樹の下で、僕は迫りくる脅威を前に、強く剣を握りしめた。
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