第25話 銀の百合との共闘
「カイトさん、お願いします!」
「はい!」
ルーシィさんの凛とした声に応え、僕は一体のオーガの前に立ちはだかった。背後ではソフィーリアさんが詠唱を始め、ララさんが短剣を構えてもう一体のオーガの注意を引こうとしている。ルーシィさんは、残る一体と対峙。即席ではあるが、Bランクパーティ「銀の百合」との共闘が始まった!
僕が引き受けたオーガは、仲間をやられた怒りか、あるいは森の異変による凶暴化の影響か、目を血走らせて棍棒を振り回してくる。そのパワーは凄まじいが、動きは単調だ。
(落ち着け…一体ずつ、確実に!)
僕はCランクになったばかり。Bランクの彼女たちの足を引っ張るわけにはいかない。いや、むしろ、僕がここで力を示さなければ!
【身体強化(中)Lv.1】→Lv.2!
【剣術(応用)Lv.2】→Lv.3!
僕はオーガの猛攻を、進化した身体能力と剣術スキルで捌いていく。ボルガンさんから貰った新しい剣は、オーガの硬い皮膚にも確かなダメージを与えてくれる。受け流し、回避、そして的確な反撃。以前オーガと戦った時よりも、明らかに体が軽く、動きが洗練されているのが自分でも分かった。
(いける…! これなら!)
しかし、油断はできない。オーガの一撃は致命傷になりかねない。僕は【構造解析】スキルを使い、オーガの動きや体の構造から、より効果的な攻撃箇所を探る。
(あの棍棒を振り上げた時の脇腹…鎧の隙間…そこだ!)
オーガが大振りな攻撃を仕掛けてきた瞬間、僕はその懐へ潜り込み、解析した弱点目掛けて剣を突き立てた!
「グオオオオッ!?」
狙い通りの一撃! オーガが苦痛に身を捩らせる!
その様子を、横目で見ていたララさんが叫んだ。
「すごーい! カイトっち、やるぅー!」
「ララ! 集中して!」とルーシィさんの叱咤が飛ぶ。
彼女たちの戦いも熾烈だった。ルーシィさんの剣技は、僕など足元にも及ばないほど洗練されている。正確無比な突きと斬撃が、オーガの攻撃をいなし、確実にダメージを与えていく。ララさんは、その俊敏さを活かしてオーガの周りを飛び回り、短剣で急所を狙ったり、石を投げて注意を引いたりと、見事な撹乱役を務めている。ソフィーリアさんの回復魔法が、後方から絶えず仲間を支援しているのも分かる。
(これが…Bランクパーティの連携…!)
感嘆しつつも、僕は自分の戦いに集中する。僕が一体を引きつけている間に、彼女たちが残りを片付けてくれれば…!
しかし、凶暴化したオーガはしぶとかった。僕がダメージを与えたオーガも、怒りでさらに動きが激しくなる。ルーシィさんたちも、消耗しているのか、徐々に押され始めているように見えた。
(このままじゃジリ貧だ…! 何か、流れを変える一手を…!)
【戦術思考】スキルをフル回転させる。僕のスキルと、彼女たちの力を組み合わせれば…!
「ルーシィさん、ララさん!」僕は叫んだ。「僕がこいつの体勢を崩します! その隙に、ルーシィさんの強力な一撃を!」
「…! 分かりました! ララ、援護を!」
「オッケー!」
僕は目の前のオーガに向き直る。ただ攻撃するだけじゃない。相手のバランスを崩し、大きな隙を作り出す!
【剣術(範囲攻撃)Lv.1】(New!)
僕はオーガの足元を狙って、剣を薙ぎ払う! 直接的なダメージは少ないが、バランスを崩すには十分だ!
「グォッ!?」
オーガがよろめいた瞬間、ララさんが目にも止まらぬ速さで駆け寄り、オーガの顔面に石つぶてを叩きつけた!
「今よ、ルーシィ!」
「はあああああっ!」
ララさんの合図と共に、ルーシィさんの持つロングソードが、眩い光を放った! 彼女が魔力を込めて放つ、強力なチャージスキルだろう!
光の斬撃が、体勢を崩したオーガの胴体を一閃する!
ズバァァァァン!!
凄まじい音と共に、オーガの体が真っ二つに断ち切られた!
「やった!」ララさんが歓声を上げる。
しかし、まだ終わっていない。残るオーガは二体! しかも、仲間をやられたことで、さらに凶暴性を増している!
「カイトさん、加勢します!」
ルーシィさんが、息を切らしながらも僕の隣に並び立つ。
「はい!」
ここからは、四人での連携だ!
ララさんが再び撹乱役となり、オーガの注意を引きつける。ソフィーリアさんの回復魔法が、僕とルーシィさんの傷を癒し、力を与えてくれる。
そして、僕とルーシィさんが、二体のオーガに立ち向かう!
「カイトさん、右の個体の鎧の繋ぎ目!」ルーシィさんが叫ぶ。僕の【構造解析】能力に気づいているのか!?
「はい!」
僕はルーシィさんの意図を汲み取り、右のオーガの鎧の弱点を突く! 同時に、ルーシィさんが左のオーガの動きを封じる!
【連携(初級)Lv.1】 (New!)
初めて組んだとは思えないほど、僕たちの動きは噛み合っていた。互いの能力を理解し、補い合い、オーガたちを追い詰めていく。スキルが、経験が、この場で新たな力へと昇華していくのを感じる!
ララさんがオーガの足元を掬い、ルーシィさんが渾身の斬撃を浴びせ、そして僕が弱点にとどめの一撃を叩き込む!
激闘の末、ついに残りのオーガも全て打ち倒すことができた。
*
「はぁ…はぁ…終わった…」
森の中に、荒い息遣いだけが響く。僕も、銀の百合の三人も、その場にへたり込み、疲労困憊だった。けれど、その表情には安堵の色が浮かんでいた。
「や、やったー! さっすが私たち!」と、ララさんが拳を突き上げた。
「ふぅ…助かりました、カイトさん。本当に…あなたがいなければ、どうなっていたことか…」ルーシィさんが、額の汗を拭いながら僕に深々と頭を下げた。
「いえ、僕の方こそ、皆さんのおかげです。一人では絶対に勝てませんでした」
僕も頭を下げる。格上のBランクパーティとの共闘は、僕にとって計り知れないほど大きな経験となった。
「それにしても、驚きましたわ…カイトさん」ソフィーリアさんが、回復魔法で消耗した魔力を補いながら、穏やかに言った。「あなたの剣技と、あの…敵の弱点を見抜く力。噂には聞いておりましたが、これほどとは…」
「本当本当! カイトっち、めちゃくちゃ強かったよ! なんでCランクなの? Bランク、いやAランクでも通用するんじゃない!?」ララさんが興奮気味に同意する。
彼女たちの素直な称賛に、僕は少し照れてしまう。
「いや、そんなことは…まだまだです」
「ご謙遜を」ルーシィさんが微笑む。「少なくとも、Cランクに留まる器ではないことは確かですわ。それに、あなたのその力は、今のこの森の状況において、非常に貴重なものだと思います」
ルーシィさんは真剣な表情になり、僕に提案を持ちかけてきた。
「カイトさん。もしよろしければ、今回の私たちの調査、もう少しだけご一緒していただけませんか? この森の異変は、思った以上に深刻なようです。あなたの力があれば、きっと心強い」
彼女たちの調査は、ギルドからの正式な依頼だ。それに協力することは、僕自身の目的(月光樹探し、森の異変調査)にも繋がる。そして何より、この頼もしいBランクパーティと一緒に行動できるのは、僕にとっても大きなメリットだ。
「…はい、分かりました。僕でよければ、協力させてください」
僕がそう答えると、ルーシィさんたちは嬉しそうな表情を浮かべた。
「ありがとうございます!」
「やったー! これで百人力だね!」
「ふふ、よろしくお願いいたしますわ、カイトさん」
僕たちは互いに頷き合い、まずは戦利品(オーガの素材)を協力して回収することにした。素材の質はやはり高く、特に魔石はかなりの価値がありそうだ。これは山分け、ということになるだろう。
素材回収を終え、一時的に休息を取りながら、今後の行動について相談を始める。森の異変の中心はどこなのか? 月光樹の手がかりは? そして、僕たちを監視しているかもしれない、あの「影」の存在は…?
戦闘中はそのプレッシャーを感じなかったが、戦いが終わり、静寂が戻ると、また遠巻きに、複数の気配がこちらを窺っているのを感じた。ルーシィさんたちも、その不穏な気配には気づいているようだ。
「どうやら、ゆっくりはしていられないようですわね…」
ルーシィさんの言葉に、僕たちは頷き合った。
僕と「銀の百合」の、危険な森の奥部への探索行が、今、始まろうとしていた。
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