6章 素材探求と深まる謎

第24話 森の深淵、共闘への序章

Cランク冒険者として、僕の新たな日々が始まった。ギルドマスターからの推薦、ボルガンさんやリズさんたちからの祝福を受け、僕は確かな自信と共に次なる目標を見据えていた。それは、月光石の剣を完成させるために必要な、二つの特別な素材――「魔力伝導性の高い木材」と「衝撃吸収性に優れた金属」を探し出すことだ。


(その前に、今の僕の力をちゃんと把握しておかないとな)


僕は自室で、これまでに自覚したスキルを頭の中で整理した。僕の力の根源はまだ謎に包まれたままだが、経験がスキルとなり、レベルアップしていくことは確かだ。


「僕が今、使えるスキルは…」


まず戦闘系。【剣術(基礎)】はオークやロックリザードとの戦いでかなり上がり、Lv.3くらいかな。【剣術(応用)】もゴブリンロード戦でLv.2になった。【身体強化】はオーク戦で(中)Lv.1に進化し、【受け流し】も熟練度は上がっているはず。【自己治癒(微弱)】はLv.1だけど、回復力は実感している。攻撃力を上げる【筋力強化(中)】と【斬撃強化】もLv.1だ。


探索系は、【索敵(低)】、【隠密(低)】、【危機察知(低)】がそれぞれLv.2くらいだろうか。森での活動には欠かせないスキルだ。そろそろ、探索系のスキルが低から中に上がらないだろうか。


採取系も充実してきた。【薬草知識(初級)】はLv.2、【剥ぎ取り】もオークやロックリザードのおかげでLv.2になった。【採掘】はLv.1だけど、鉱山で覚えた。


鑑定系も増えた。【鑑定(鉱石)】、【鑑定(道具)】、【鑑定(植物)】、それぞれLv.1だけど、情報収集に役立つ。


生産系は、ボルガンさんのところで集中的に鍛えた【鍛冶(基礎)】がLv.5と一番高いかもしれない。【鍛冶(観察)】もLv.4まで上がった。【金属知識(初級)】、【温度管理(低)】、【筋力制御】もLv.1~2くらいにはなっているはず。それに【道具作成(簡易)】もLv.2だ。


耐性系もいくつか覚えたな。【耐幻覚(低)】、【耐麻痺(低)】、【火耐性(微弱)】、いずれもLv.1だけど、いざという時に助けになる。


そして、変わり種だけど【指導(初級)Lv.1】、【戦術思考(初級)Lv.1】、【武器知識(斧)Lv.1】、【構造解析(低)Lv.1】…。体力系の【持久力向上(小)】もLv.3くらいにはなっているだろう。


(本当に、たくさんのスキルが身についているんだな…)


スキル無しの落ちこぼれだった頃が、遠い昔のことのように思える。この力があれば、きっと素材も見つけ出せるはずだ。



僕は改めてボルガンさんの元へ行き、素材に関するさらなる情報を求めた。


「ふむ、『魔力伝導性の高い木材』と言えば、やはり『月光樹』じゃろうな。深淵の森の最奥部、月の光を浴びて育つという伝説の木じゃ。その枝は、マナを吸い上げ、蓄える性質があると言われておる」

「月光樹…」

「もう一つの『衝撃吸収性に優れた金属』は、迷宮に棲むという『メタルスライム』の核じゃろうな。あれは純粋な魔力金属の塊のようなもので、どんな衝撃も吸収してしまうらしい。まあ、どちらも伝承じゃ。真偽は定かではないがな」


ボルガンさんの言葉は、以前聞いたものとほぼ同じだった。やはり、これらの素材を見つけるには、森の最奥部か、迷宮の深層へ行くしかないようだ。


僕はシルヴィアさんの店も訪ねてみた。


「まあ、月光樹とメタルスライムですって? どちらもロマンのあるお話ですわね」


シルヴィアさんは優雅に微笑みながら、いくつかの情報を付け加えてくれた。


「月光樹が生えているという『迷いの泉』は、その名の通り、一度入ると方向感覚を失いやすい、特殊な魔力場に覆われているそうですわ。エルフですら迷うことがあるとか。メタルスライムについては…迷宮の特定の階層、それも金属鉱脈が豊富な場所で目撃例があるようですが、神出鬼没で、捕獲できたという記録はほとんどありませんわね」


どちらも難易度は極めて高そうだ。けれど、情報が全くないわけではない。


(まずは、森からだな。迷宮はまだ僕には早すぎるだろうし、森の異変の調査も兼ねられる)


僕は目標を定め、シルヴィアさんから森の奥で役立ちそうなアイテム…より強力な松明や、瘴気を多少防げるという香草などを購入し、準備を整えた。



数日後、僕は深淵の森の奥部へと足を踏み入れていた。

Cランクになったとはいえ、単独での奥部探索は初めてだ。中域とは比較にならないほど、魔物の気配が濃く、空気も重い。木々は天を覆い隠し、昼間でも薄暗く、不気味な静寂が漂っている。


(瘴気…これが、シルヴィアさんの言っていた…)


微かに、しかし確実に、淀んだ空気が漂っているのを感じる。長時間吸い込めば、体に悪影響があるかもしれない。僕は購入した香草を口元に当て、呼吸を整えながら進む。


ガサッ!


茂みが揺れ、鋭い爪を持った魔鳥――グリフォンの下位種のような魔物が飛び出してきた! 中域では見かけなかったタイプだ!


「シャアアアッ!」


甲高い鳴き声と共に、猛スピードで襲いかかってくる!


「くっ!」


僕は即座に剣を抜き、応戦する! 【身体強化(中)】を発動させ、素早い動きに対応する。新しい剣は、魔鳥の硬い羽毛も難なく切り裂いた!


戦闘は数分で終わったが、油断はできなかった。次から次へと、強力な魔物が現れる。巨大な牙を持つ猪、毒々しい色の蜘蛛、そして…オーガ!


「グルオオオオッ!」


以前戦った個体よりも、さらに一回り大きく、目が赤く充血している! 森の異変の影響で、凶暴化しているのは明らかだ!


「こいつは…!」


僕は剣を構え直し、オーガとの戦闘に突入する! Cランクになり、スキルも成長したとはいえ、油断すれば一瞬でやられる相手だ!


【剣術(応用)Lv.2】!

【斬撃強化 Lv.1】!


僕はオーガの棍棒を紙一重でかわし、懐へ飛び込み、弱点である脇腹へ斬撃を叩き込む! 手応えはある!


しかし、オーガの反撃も凄まじい。棍棒の薙ぎ払いを避けきれず、体が吹き飛ばされる!


(HP -40)


「ぐぅっ…!」


受け身は取ったが、ダメージは大きい。【自己治癒】スキルが発動し、痛みが和らいでいくが、それでも消耗は激しい。


(長期戦は不利だ…! 速攻で決める!)


僕は【戦術思考】スキルを働かせ、勝機を探る。オーガの動きはパワーはあるが単調だ。あの巨体なら、足元への攻撃は避けにくいかもしれない!


僕は低く姿勢を保ち、オーガの足元へ滑り込むように突進! 棍棒の攻撃範囲から逃れ、アキレス腱あたりを狙って剣を横薙ぎに振るった!


「ゴアアアアアッ!?」


狙いは的中した! 腱を断ち切られたオーガが、バランスを崩して膝をつく!


(今だ!)


僕は立ち上がり、がら空きになったオーガの首筋目掛けて、渾身の力を込めて剣を突き刺した!


ズブリ!


オーガは短い呻き声を上げ、巨体を地面に横たえた。


「はぁ…はぁ…なんとか、勝てた…」


オーガを倒したとはいえ、僕の消耗も激しかった。森の奥部は、やはり危険すぎる。


(それに…ずっと感じている、この気配…)


戦闘中も、常に感じていた。あの「影」の気配だ。直接的な妨害はない。けれど、まるで僕の戦いを観察し、評価しているかのような、不気味なプレッシャー。


(一度、体制を立て直すべきか…?)


そう考え始めた、その時だった。


「――そこの方! ご無事ですか!?」


凛とした女性の声が、森の奥から聞こえてきた。同時に、複数の人間の気配と、それを追う複数の強力な魔物の気配を【索敵】スキルが捉えた!


(誰かいる! しかも、戦ってる!?)


僕は声がした方へと駆け出した。危険かもしれない。けれど、見過ごすことはできない!


木々の間を抜け、少し開けた場所にたどり着くと、そこには信じられない光景が広がっていた。

Bランクパーティ「銀の百合」のルーシィさん、ララさん、ソフィーリアさんが、三体のオーガ…それも、僕が今しがた倒した個体と同等か、それ以上に凶暴化したオーガたちに囲まれていたのだ!


「ルーシィさん! ララさん! ソフィーリアさん!」


僕の声に、三人が驚いたようにこちらを振り返る。彼女たちの表情には疲労の色が濃く、装備も所々破損している。どうやら、激しい戦闘を繰り広げてきたようだ。


「まあ、カイトさん! あなたこそ、なぜこんな森の奥に!?」とルーシィさん。息が上がっている。

「うわー! カイトっち! 助かったー! こいつら、めちゃくちゃタフでキリがないんだよ!」とララさんも、いつもの元気はなく、苦しそうだ。

「ふふ、カイトさん、ごきげんよう…って、本当に、まずい状況ですわ…」ソフィーリアさんは回復魔法を使っているようだが、オーガの猛攻に追いついていない。


「グオオオオッ!」


オーガの一体が、隙をついてララさん目掛けて棍棒を振り下ろした!


「ララ!」

「危ない!」


ルーシィさんと僕の声が重なる! 僕が駆け出すより早く、ルーシィさんがララさんを突き飛ばし、自らが盾となって棍棒を受け止めた!


ガギィィン!!


ルーシィさんの持つ業物であろうロングソードが、オーガの棍棒と激しく火花を散らす! さすがはBランク、僕とは格が違う受け止め方だ。しかし、それでも完全に衝撃を殺しきれず、彼女の体が大きくよろめいた。


「ルーシィさん!」


そこへ、別のオーガが追撃を仕掛けようとする!


「させません!」


僕は即座にそのオーガの前に立ちはだかり、新しい剣で攻撃を受け止めた!


「カイトさん!?」

「ここは僕が! 皆さんは体勢を立て直してください!」


Bランクパーティが苦戦する相手だ。僕が入ったところで、状況が劇的に好転するとは思えない。けれど、何もしないよりはマシだ!


「…! 分かりました! 感謝します、カイトさん!」


ルーシィさんは一瞬ためらったが、すぐに決断し、僕に頷いた。


「カイトっち、ごめん! すぐ援護する!」ララさんも短剣を構え直す。

「回復、集中します…!」ソフィーリアさんが杖に魔力を込める。


Bランクパーティ「銀の百合」と、Cランク冒険者カイト。

即席の、しかし決死の共闘が、今、始まる!

相手は凶暴化したオーガ三体!

僕たちは、この森の深淵で、生きて帰ることができるのだろうか…!?

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