第10話

「ごめんねっ」


「もう謝らなくていいって」


「だって…叶えてあげられなかった…」


「………」


「家族っ、作ってあげられなかった…」


「っ」


「お願いっ…嫌いにならないでっ」



ねぇ、紫。


話を聞かない俺を見るたびどんな気持ちになった?


休日なのに無音でひとりぼっちのリビングを見る度、どんな気持ちだった?



どれだけ自分の気持ちを殺し続けてきたの?



もうどうすることもできない悩みを抱えて、1人で悩んでたの?



自分のことしか考えない俺のことを、どうしてそんなにも考えてくれるのっ…。



「嫌いになるわけないっ…」


「うっ…っ」


「だって紫は、家族になってくれたっ」


「っ」


「初めてっ…夢を叶えてくれたんだよ?」


佐原紫から、朝倉紫になってくれた。


初めてできた家族だった。


嬉しかった。


紫と出会えて幸せだった。



「ごめんね。今まで1人にさせて」


「集…」


「好きだよ、紫」


大好きだ。


誠心誠意で抱き締めたら、

その愛が伝わったかのように細い手で、ぎゅっと俺を抱き締めてくれた。


涙が出そうになった。


辛い。寂しい。

だけど、なんて愛しい。


やっぱり紫はすごい。


愛って…すごいや………。



「ねぇ紫」


「ん…?」


腫れた瞼をゆっくり開けて俺を見る。

頬を伝った涙を優しく拭って笑った。


「もし記憶がなくなったとしても、俺もきっと紫のこと思い出すよ」


「え…」


「何度だって好きになる自信あるよ」


「ふっ…ぅっ」


「2人で、生きていこうね」



たった2人。


だけど1人じゃない。



それだけで強くなれる。


「すっごく久しぶりなんだけど、キスしていい?」


「え…」


「答えは聞かないけど」


「集…んっ……」



好きだ。好き。


すっごい好き。



離れないで。離さないで。


いなきゃ生きてけない。



「いつもありがとう。美味しいご飯作ってくれて」


「…うんっ…」


「休日、眠かったらさ…俺も一緒に寝るから」


「っ」


「紫。結婚してくれて、ありがとね」





……家族になってくれて、ありがとう。

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