第3話

ご飯を食べ終えて、またしばらくテレビを見ていたけど、だんだん飽きてきて外へ出かけようと思った。


紫はまったく寝室から出てこなかったけど、何も告げず家を出た。



近くの本屋へ入ると、いつものお姉さんがレジで迎えてくれた。



「あ、朝倉さん。こんにちは」


「こんにちは」


「予約の本ですよね?」


「あ、はい。お願いします」


「ちょっと待ってて下さいね」



そう言うとお姉さんは笑顔で奥の事務所へ消えていった。


この本屋の俺は言わば常連で、読書が趣味の紫とよく来ていた。

最近はまったく紫と一緒にはこないけど。


そう言えば俺は本なんてまったく読まない人だったのに、紫の影響でよく読むようになったんだよなぁ。



「お待たせしました」


「あ、ども」



少しぼーっとしていた俺の前に、分厚い本を持ってお姉さんが戻ってきた。


「こちらで大丈夫ですか?」


「あ、はい。大丈夫です」


「それにしてもこんな昔の本、よく予約して買おうと思いましたね」


「え、ああ…好きなんです。この本」


「読んだことあるんですか?」


「昔図書館で借りて…。人におすすめしてもらった本なんです」


「へぇ」


彼女は私も今度読んでみようかなと言ってその本をレジで通した。



会計をしながら、俺はあの本を教えてもらった時のことを思い出していた。



本のタイトルは『When I loved you』。


タイトルからわかるとおり、恋愛小説だ。


この本を知ったのは大学1年の冬。


教えてくれたのは、紫だった――。




大学にある、広くて本がたくさんあって、うちの学生しか入れない場所。


つまり、学校の図書室。



本なんて読む方じゃないけど、せっかく学生しか入れないし行ってみようかと思って軽い気持ちで入った。



だけど、入って失敗したと思った。



だって別に読みたい本があるわけでもないし、

たくさんありすぎて何に手をつけたらいいのかわかんなかったから。


漫画もないし雑誌もない。



経済とか、哲学とか、数学とか、

いかにも大学生らしい本ばっかり。

普通の本もたくさんあるけどやっぱりよくわからない。


俺は大きな本棚の前で、大きなため息をついた。



「何か探してるの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る