第6話

「紗枝。今、虹が出てる」


『え?』


「あの日も出てたんだ。紗枝が出て行った次の日の朝」


『っ』


「今さらだけど…ちゃんと謝れなかったから」



ごめん。



そう一言告げた。


あの時は言えなかった。

今なら言えるこの言葉。


どれだけ時間がかかったんだろう…。



『え、そんな…私の方こそごめん。変な意地張って…』


「ううん」


『ありがとうね』


「……うん…」



さっきまでうるさかった心臓は不思議なくらいに落ち着いていた。


なんでだろ。

ずっと気になってたことが聞けたから?

やっと謝れたから?

虹が架かったから?



…違うな。

多分、思っていたよりもずっと…彼女の声は幸せそうだったから。



「紗枝」


『…ん?』


「俺…幸せだったよ」


『え…』


「紗枝と付き合えてよかった」


『っ』



喧嘩することも多かったし、性格も全然合わなくて、困らせる事も傷つける事も泣かせることも多かった。


だけど、それでも俺は…紗枝と付き合って、一緒にいれたことが幸せだった。




「あの雨の日、追いかけてあげられなくて本当にごめん」


『っ…うん』


「すっごく、好きだった」


『っ…』



今なら、今なら乗り越えられるかなって思った。



でも、それは違う。





別れて君を失った後だから、言えるんだ。





「紗枝」




もう一緒にいることはできないけれど、





「幸せになってね」





――きっと誰より、君の幸せを願ってる。

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