第7話

揺れた心で、強がって言った言葉。


紗枝はそんな言葉に泣きそうな声で、でも嬉しそうな声で頷いた。


電話を切った俺の指は微かに震えていた。



空しさが胸をかき乱す。


たった1つ、ワガママを叫んでもいいのなら、

その幸せを与えてあげられるのが俺じゃないことが、少し寂しい。


でも自然と心は落ち着いて、どこかすっきりした気持ちになっていた。



再び外に目を向けると、もうそこには虹の姿はなかった。


その代わりに、どんよりとした雲が切れて温かい光が町を照らしていた。



雨に反射して、町が眩しい。



風が心地よくて、空気は澄んでて、緑は濃くて、光はあったかくて…。




――もう全部全部、嫌になるほど愛しかった…。





だけど間違ってない。

今の自分を誇らしく思える。



きっとあの別れた日を超える事はできないけれど、

これからは乗り越えていける。



そういう自分になっていけたらいい…。





「さよなら」



愛しくて眩しい日々も、雲と一緒に擦り切れていく。




瞼を閉じてその裏に浮かんだのはもう君じゃない。





別れは辛い。


だけど大丈夫。



彼女が最後に言ってくれた言葉が、確信をくれた。




幸せになってねなんて曖昧な言葉じゃない。


彼女らしい、一言。











秋都も、幸せになれるよ。絶対に。





さようなら。





――ありがとう。









雨から虹











end

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