第55話
―――――――……
秋は体育祭の時期だ。
委員会がそれぞれでる個人種目の立候補をとっているHRの時間。
担任がいないせいか教室はざわついていて、まったく関係のない話をしている女子や、ゲームをしている男子までいた。
「よし、これで個人種目は決定ね。あと選抜リレーについてなんだけど、女子も男子も元陸上部から選抜していい?」
「ええ、私無理だよ。専門ハイジャンだったし」
「私も無理ー」
「お前らなぁ…」
実行委員も大変だなぁなんて同情していると、さっきハイジャンだから無理だと断った女子たちの会話が聞こえてきた。
「そういえば1年の紫乃ちゃんだっけ?あの子ハイジャンやめちゃったらしいよ」
え?
「え、いつ?」
「1週間くらい前?なんか顧問から専門下ろされたらしい」
「あーでもあの子結構ハイジャンの足引っ張ってたからなぁ。2年から相当きつく言われてたみたいだし」
「短距離が得意らしいから、そっちに行くって」
嘘…だ。
そんなの聞いてない。
一言も、紫乃からなにも。
「じゃあ他に足速いやつ…あ、そういえば朝日この間の体力テストのタイムよかったよな?」
「ハイジャン…」
「は?ハイジャンは種目にねぇよ」
「あんなに練習してたのに…」
「いや知るかよそんなの…って、おい朝日?!」
教室を飛び出すなんて初めてだった。
廊下をこんなに早く走ったのも初めてだった。
衝動に駆られたのなんて、初めてだった。
ハイジャンをやめた俺が今更何を紫乃に言えるかなんて、考えてなかった。
ただ紫乃が落ち込んでるんじゃないかって。
紫乃が泣いていないかって。
それだけが心配で、今は紫乃の顔を見ることで、俺が安心したかったから。
だから走った。
情けないくらい、走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます