第54話
家に帰って、私は狂ったようにハイジャンに関する記事や本をゴミ袋に詰めた。
そんな中で見つけた1枚のDVDは私が中学1年生の時の県大会のときのものだった。
つまり、先輩のジャンプを初めて見たときの大会だ。
私はそれもゴミ袋に入れようとしたけれど、せめてもう一度だけ見てみようと思い直し、汚い部屋の中でデッキにそれを入れ、テレビをつけた。
再生して流れたのは、自分が短距離で走っている姿。
ハイジャンを跳んでいる姿は何度も動画に撮って見ていたけれど、自分の走っている姿を見たのは、実は初めてだった。
そういえばこの時は4着で、表彰台には立てなかったんだ。
力を入れてやっていたわけではないけれど、なんだかとても悔しかったのを、覚えている。
私、結構必死な顔してるな。
今よりもっと髪も短くて、まるで猿みたいだ。
このあとすぐに先輩のハイジャンをみて、私はあっけなく短距離を辞めたけれど、顧問が残念がっていたのが少し嬉しかっただなんて言ったなら、きっとブチ切れられるだろうな。
「………」
そして、ハイジャンの映像が流れた。
たくさんの選手が高いバーを越えていく中で、やっぱり目に留まったのは…朝日先輩だった。
3年経った今も色あせてない。
すべてが綺麗で、すべてが胸を熱くさせる。
ハイジャンをやりたいと思ったあの時の気持ちを、今でもこんなに鮮明に思い出せる。
大会新記録をあっさりたたき出した先輩は、涼しそうな顔をしていたけれど、とても嬉しそうだった。
「朝日…先輩」
気づけば私は、先輩の笑顔を見ながら、ボロボロと涙を流していた。
今の私を見たら、先輩はなんて言うだろう。
「せんぱいっ…」
情けないと、突き放すだろうか。
仕方ないと、笑うだろうか。
――“がんばれ”
せっかく先輩は応援してくれていたのに。
結局一度もジャンプ見てもらえなかったな。
まあ見せられるほどのものでもなかったんだけど。
先輩、私ね、私…詳しい理由はわからないけど、やっぱり先輩は高校でもハイジャンをやりたかったんじゃないかって思ってるんです。
どうしてもハイジャンを続けられなくて、だから私にもあんなふうに言うしかなかったのかなって。
だから私、先輩の分まで頑張ろうって思ってたんです。
先輩が跳べなかった分まで、跳ぼうって。
だから朝練も夜練も先輩のことを思えばなんてことなかった。
同じ部活の子の噂話も、先生の呆れ顔にも耐えられた。
先輩は笑っていたけれど、私にとって先輩はやっぱり神様みたいな人だった。
私は先輩の分まで高く跳ぶことはできなかったけれど、その思いだけは嘘じゃないって、私は胸を張って言えます。
「先輩…」
ここまでこれたのは、先輩のおかげなんです。
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