第53話

職員室を出て、下駄箱のあるA棟へ向かう途中、あの渡り廊下を通った。



先輩と、初めて話した場所。



「先輩…」




ずっと気づいてた。



私が跳ぶたびに笑われてること。

私が失敗するたびにため息をつかれてること。


私の失敗が、みんなの足を引っ張ってしまってること。



励ましてくれる友達もいたけれど、悔しい気持ちは膨らんだ。



その悔しさがバネになればいいと思ってた。



それでも跳ぶことができないのは、顧問の言っていた通り身長と…才能がないせいだ。



私は、本当は自分でも気づいていた。


跳ぶことは、できないんじゃないかって。


先輩のようには、なれないんじゃないかって。



目標にしていたものがあまりに遠かった。


無謀だった。



情けない。

情けない、情けない。



「っ…う」


かっこ悪い。

失敗する姿さえ見てもらうことができないなんて。



なにが認めてもらえる選手だ。

なにが隣を歩けるようになりたいだ。



私は先輩の後姿すら見えてない。


決して届かない。



「うっ…っふ」




でも、




――“最初は単なる憧れだったけど、今はハイジャン大好きだから”






嘘じゃなかったの。





――“憧れるだけじゃなくて、先輩に認めてもらえるような選手になります”





ここで先輩に誓ったこと、1つも嘘じゃなかった。





本当にそうなれるって、信じてた。





「くっ…っ…」






高く、高く跳べるって、





信じてた。

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