第50話

放課後。


俺は裏庭にある陸上部のグラウンドへ行ってみた。



ここは陸上関係の授業の時と陸上部以外はめったに使わないから一般の生徒はほとんどこない場所だった。



短距離、長距離、幅跳びに、槍投げ。


たくさんの種目と選手のいる中に見つけたハイジャンの練習場所。

ハイジャンの選手は背の高いメンバーばかりだった。


そんな中で頭1つ小さい生徒。

それが紫乃だった。



紫乃が練習している姿を見たのは、初めてだった。



今まで一度も見たことがなかったのは、紫乃にこないでほしいと言われていたからだった。


ちゃんとした大会で、そこに立っている自分を見て欲しいと、紫乃が言ったから。



だから俺は遠いところから、紫乃にバレないように、その姿を眺めた。



悠々と他の生徒が飛び越えていく160センチ。


紫乃の番になって、そのバーは初めて落ちてしまう。


紫乃のなんとも言えない悔しそうな表情。

それよりも目に入ってしまうのは、その紫乃を見て薄ら笑いを浮かべる、他の生徒のほうだった。



紫乃は…こんな環境で練習してるんだ。



健気に自分でバーを戻して、マットから下りて、戒めのようにグラウンドを走り始める紫乃を見て、心が痛んだ。




こんなことを、いつも繰り返しているのだろうか。




俺の前では、いつもいつも明るく振舞っているのに。



頑張るってあんな風に笑いながら言うのに。




部活が終了の時間になって、紫乃は顧問のところへ何度も頭を下げて、1人残ったグラウンドで飛び続けた。



自分の身長より何センチも高いあのバーを落としては戻して、また落として。



フォームも綺麗だし、踏み込みも悪くないのにどうしても跳べない。



アドバイスをしたくても俺は教えることが得意じゃなかったし、正直やればできてしまうほうだったから、練習もさほど真面目にやっているほうではなかった。



だから紫乃に憧れていると言われたとき、嬉しい反面、申し訳なくもあった。



なんでこんな俺にって。


不思議で不思議でたまらなかったんだ。

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