第45話
考えてみたら…私はあまり先輩のことをよく知らない。
「先輩」
「ん?」
「ちょっとだけ…時間もらえませんか?」
「え?」
「少しだけ、話したいことがあるんです」
「いいけど」
じゃあとりあえず買ってくると言って先輩はレジへ向かった。
スーパーをでてすぐに、大きなビニール袋から水の入ったペットボトルを渡されたときとても驚いた。
いつの間に買っていたんだろう。
私は何度もお礼を言って、2人で近くの喫茶店に入ろうとした。
でもそこはこの間先輩が女の人と2人でいるのを見かけた喫茶店で、入るのを躊躇った。
「先輩、やっぱりやめましょう」
「え、なんで」
「ここは嫌です」
先輩がせっかく一緒にいてくれてるのに、なんで私わがまま言ってるんだろう。
「なんで?」
「だってここ…」
「……ああ」
先輩は少し考えてから納得したように呟いた。
「この間いたの、やっぱり紫乃だったんだ」
やっぱり、バレてた。
それもそうだ。
あんなにばっちり目があって、思い切り反らして、そこから逃げて。
「他の人と一緒にいた場所は嫌?」
「ちが、そうじゃなくて…」
「じゃああっち行こう」
先輩が指差したのは24時間営業のファミレスだった。
みんな夏祭りに行っているせいかファミレスにはほとんど人がいなくて、店員さんもなんとなく暇疲れしている感じだった。
2人にしては広すぎるテーブル席に通されて、先輩は大きなビニール袋をどさっと席に置いた。
こうして先輩と2人っきりになるのは、あの渡り廊下で初めて話した時以来だ。
先輩はこれから家でご飯だったし、私もお腹がいっぱいだったので、2人ともコーヒーを頼むことにした。
コーヒーがくると先輩は自分の分のガムシロップとミルクを全部私にくれた。
「なんで甘党だって知ってるんですか?」
「勘。甘いの好きそう。で、苦いのは嫌いそう」
「あたりです…ありがとうございます」
私はありがたくシロップとミルクを全部入れて飲んだ。
「それで、話したいことって何?」
「話したいっていうか…一緒にいたかったっていうか」
「ふっ、なにそれ」
先輩はクールそうに見えるけど意外と笑ってくれる。
でもそれは私にだけじゃなくて、誰に対しても。
先輩の周りにはいつも人がいる。
それは先輩が外面だけじゃなくて、内面もとても魅力のある人だから。
学年が離れててもわかる。
「私先輩のこと好きなんです」
「知ってる」
「だから先輩のこと、もっと知りたいなぁって思って」
「………」
片思い歴は3年だけど、実際先輩と私の関係はまだ4ヶ月だ。
まだまだ知らないことで溢れてる。
そんな私が先輩を好きだと何度も伝えるのは実際おこがましいことなのではないかと最近思い始めてきた。
だから知りたい。もっと先輩のこと。
そして知って欲しい、私のことも。
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