第42話

―――――――……



夏祭りに行こうと誘われたのはついさっきの話だった。


私は部活帰りで疲れていたし、何よりもうクーラーの効いた部屋から出たくなかった。



でもどうしても同クラの梓が行きたいというので仕方なく携帯と1000円しか入っていない財布を持って家を出た。



「紫乃ーお待たせーってか何?!紫乃ジャージかよ」


「そういう梓は浴衣ですか」


「あったりまえでしょ!ちょっと一緒に歩くの恥ずかしいんですけど!!」


「浴衣持ってないし」


「せめて私服でこいよ」



早速萎えたわ~とか言ってる梓は大分失礼だ。


強制的に呼び出したのはそっちだし、梓が浴衣を着てくると知っていたら私だって私服できた。


それに梓も私と同じ体育会系だから気にしないかと思っていた。



でもなんだろう。

こんな風に綺麗な柄の浴衣を着ている梓を見ると、やっぱり彼女は女性に見えた。

もともと梓は姉御気質で、背もすらっと高くて、髪もテニス部だからそこまで厳しく言われていないみたいだし。


例えば今梓が浴衣じゃなくて私服できていたとしても、私は彼女の隣を歩くことに少し抵抗があったかもしれない。



「紫乃何食べる?」


「んーげそ」


「おやじか」


「梓は?」


「私わたあめー、あ、あそこにあった!ちょっと言ってくるね!!」



梓は下駄をカランコロンと鳴らして屋台の方へ向かっていった。


それを見送ってからあたりをぐるっと見回すと、地元のお祭りだというのに結構人が多くて、中には自分と同じ高校の人が何人かいるのにも気づいた。



先輩、きてるかな?



こういう人ごみにいると、すぐに先輩を探してしまう。


新入生歓迎会のときも、この間の終業式も先輩を見つけてはウキウキしていた。




会いたいな…先輩。




「お待たせ、紫乃」


「あーあーあー…」


「何、どしたの」


「…なんでもない」



四六時中先輩のことを考えてしまうなんて、私は何かの病気なんじゃないだろうか。

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