第41話

「朝日…先輩」



先輩の目の前にいた女性は、先輩の理想通りの人だった。



巨乳なのに線が細くてスタイルがとてもいい。

胸下まである髪は丁寧に巻かれていて、肌が白くて、笑ったときに伏せる睫毛が長くて…とても、綺麗な人だった。


明らかに年上だった。



先輩にそういう存在がいるって言うのは知っていた。

でも実際にその現場を見たのは初めてで、私はショックや驚きというより、納得した気持ちで2人見ていた。



だって……なんてお似合いなんだろう。


先輩は背が高くて、顔立ちも整っていて、服もオシャレで、とても高校生に見えないし、あんな美人な女性と一緒にいるとまるで芸能人のカップルを見ているみたいで、


ああやっぱり先輩は高嶺の花のような存在なんだと改めて納得してしまった。



確かに弟の美景君も顔は整っていたしモテていたけれど、朝日先輩とはまた違う。


私は断然、朝日先輩がタイプで、どうして私はこんなに遠い人を好きになってしまったのか、むしろ疑問だった。



「やっぱり…無謀だなぁ…」



そう呟いた瞬間、手に持っていた食べかけのガリガリ君が、暑さで溶けて棒から地面に落ちてしまった。


音もなく静かに落ちて溶けていくそれを見て、自分と重ねていた。



こんな風にこの気持ちが溶けてしまえたら、どんなに楽だろうか。


ああでも、それじゃあ私はきっと頑張れない。



“がんばれ”




あの言葉は今もずっと残ってる。


しっかり刺さってる。



大丈夫、頑張れる。


私は落としてしまったガリガリ君をできるだけ拾って袋に入れコンビニのゴミ箱に捨てた。



そしてもう一度先輩に目を向けた瞬間、先輩と目が合ったような気がした。



「っ」



すぐに反らして歩き始めてしまったのはどうしてだろう。


別に悪いことをしていたわけではないのに。

見てはいけないものを見たわけではないのに。



ただ私は、そんな綺麗な人を見たあとで、私のことを見ないで欲しかった。



短い髪を、黒い肌を、小さい身長を、ジャージ服の私を、見ないで欲しかった。

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