第38話
絶対に入ってると思ってた。
先輩を知っている人にいろんな情報を聞いた。
先輩の好きなタイプも、先輩の入学した高校も。
でも陸上部に入部したかどうかは聞いていなかった。
だって高校は陸上の強い高校だったし、当然のように先輩はハイジャンを続けるんだって思ってた。
疑ってなかったから、確認もしなかった。
まさか入学して、先輩がいないだなんて。
「朝から本当元気だよね」
「元気だけが取り得ですから!」
「ふふっ」
身長の高い先輩は歩くのが早い。
平気より低い私は、先輩に追いつくのに必死だ。
「あ、朝日おはよー」
「うっすー」
朝日先輩の一歩後ろを追いかけるように歩いていると、同級生の先輩たちが私を追い越して、朝日先輩と並んだ。
私の存在なんて、目にも入っていないようだった。
そりゃそうだ。
私と先輩の繋がりは、とても浅い。
入学して1週間経った頃。
私は渡り廊下でたまたま1人で歩いている先輩と出くわしたことがあった。
それが高校に入学して初めて先輩に会った瞬間だった。
3年間憧れ続けて、背中を追い続けてきた人が、今目の前に現れて、色んな気持ちが溢れでてきて、それを止める事ができなかった。
「あっ、朝日先輩っ!!」
先輩は落ち着いている人が好きだっていうのを他校の友達から聞いて知っていたはずなのに、第一印象から早速大声で先輩を呼び止めてしまった。
「ん?」
先輩は立ち止まって、私を見てくれた。
それだけで胸が苦しくなって、泣き出しそうになってしまった。
「わ、私っ、藤宮紫乃(フジミヤシノ)っていいます!名前負けしてるってよく言われるんですけど、親がつけてくれた名前に誇りを持って生きてます!」
「…あ、そう」
「中学の時、先輩のこと陸上の県大会で見て、それからずっと目標にしてました!」
「あー…」
「つまり好きです!付き合ってください!!」
「話ぶっ飛びすぎてるけど大丈夫?」
伝えたいことがありすぎて、うまく言葉にならなくて、とにかく一番伝えたかったことが、先輩の言うとおりぶっ飛んで出た。
だって先輩の声を聞いたのは初めてだったし、目が合ったのも初めてだし、もちろんこんな風に話すのも初めてだ。
手が震えた。声も震えた。
だけど、伝えたかった。
先輩の、先輩の背中をずっと…ずっと追いかけ続けてきたの。
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