第30話
警備員さんに会社の鍵を開けてもらい、部長のデスクのパソコンから取引先へメールを送った。
もうオフィスは真っ暗で、誰もいないオフィスはとても静かだった。
「………」
ふと急いでここまできたことに疲れたのか、私はそのままディスクに腰を下ろして明るいパソコンの画面を見続けた。
すると携帯が再び鳴った。
今度は電話ではなくメールだった。
差出人は母親だった。
『いい結婚式やったよ』
その一行の後には、幸せそうな新郎新婦の画像が送られてきていた。
「あ…」
それは中学の同級生2人の結婚式の写真だった。
“景子東京行くんだー?かっこいい!尊敬する!”
“俺、遠距離は無理だわ”
私のことを応援してくれていた親友と、自分の将来のために別れた元恋人。
この2人が付き合っていることはずっと前から知っていた。
とうとう2人は結婚したんだ。
「結婚…」
――“今日でこの部署の伊藤さんが寿退社します”
――“桜井さんも27だし、そろそろ結婚意識してるんじゃない?”
――“どうせ暇でしょ”
――“俺、遠距離は無理だわ”
ぼーっとしていたその時、携帯がまた振動を立てて揺れる。
「もしもし」
『もしもしー?あんたメールみた?』
「あ、うん」
母親だった。
メールをしてすぐに電話をかけてきたみたいだ。
『もう近ちゃんの結婚式感動したわー。お母さん泣いたわ』
「そう」
『景子あんた何しよっとね?元気しとっと?』
「うん。しとるよ」
『あんたは結婚せんと?こっちではあんたの同級生みんな結婚しよっとよ?』
「あー」
『どうせ仕事やてずっと続ける気ないんやったらこっち帰ってきなさいよ。近所の元ちゃんとかお父さんの後継いで立派になっとるとよ?あんたのこと美人って言うとったし』
「あはは…」
『中途半端に働いてどうすんのよ』
「………」
私の人生は…、
『お父さんも言っとったやろ?東京にいたって、生産性なんてないんやから』
一体、なんだろう。
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