第27話
「うお、びっくりした」
「ん?あ、藤井君」
「完全に気配なかったですよ今」
頭を抱えて小さくなっていた私に藤井君は眠そうな目を丸くして驚いていた。
どうやら藤井君も休憩でコーヒーを買いにきたようだ。
「あの藤井君」
「ん?」
「今日はありがとう。助けてくれて」
「いやなんかすげー顔して立ってる人いたんでこっちも驚きました」
「…朝も思ったけど藤井君ってちょいちょい失礼だよね」
「高山さんってなんか先輩って感じしないんですよね」
「ほらそれも失礼」
「ふっ、すみません」
そう言って少し吹き出すように笑い、私の隣に腰掛ける藤井君。
藤井君が座った瞬間、とてもいい香りがした。
朝も感じた香り。
多分香水なんだろうけど、男性にしてはそんなにきつくない…なんだかとても安心する香りだ。
「いつもは女性専用車両に乗るんだけど、今日はたまたまタイミングが合わなくて」
「そうですか」
「昔はね、痴漢されてもすぐに声出せたし、なんてことなかったんだけど…年取るとそういうのにいちいち驚いちゃって、痴漢されてるっていうこと事態がなんだかすごく恥ずかしくなっちゃって」
「………」
「だから嬉しかった。無言で、助けてくれたこと」
助けを求めた。
求めたけど、それで騒ぎになることのほうがよっぽど恥ずかしかった。
だから声がでなかった。
恐怖よりも先にきっと羞恥心の大きかった。
「高山さん」
「ん?」
「香水、つけすぎですよ」
「は…?」
「あとメイクも濃いと思います。爪も長いし髪も巻きすぎ」
「え、何」
「いつも助けてあげられるわけじゃないんで、今度からはちゃんと先頭の車両乗ってください」
「え?」
「わかりました?」
「は、はい…」
私が頷くのを確認すると藤井君は私の横を通ってデスクに戻ってしまった。
あのやたら安心する香水の香りを残して…。
「っていうか…何あれ…」
私は急いで自分の手首を鼻に当てた。
今日つけすぎたかな?
でもメイクも髪もいつもと一緒だし、ってことは藤井君はいつも私のことをそんな風に思ってたってわけ?
意味わかんない。
「年下のくせに…」
少し上がっていた藤井君への好感度がまた少し下がってしまった。
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