第24話

朝起きてすぐにシャワーをして、鏡の前でメイクをする。


ミキサーでグリーンスムージーを作って飲み、またまたオイルをたっぷり髪につけてマイナスイオンのドライヤーで乾かす。




万人受けする清潔感のあるスーツを着て、髪を巻いて1つに結い、お気に入りの香水をつける。


数あるヒールの中から7cmヒールを選び、いつも通り朝8時に家を出た。



いつもなら一番先頭の女性専用車両までホームの中を歩くけど、今日は少しタイミングが合わず、先頭車両に行く前に電車が来てしまった。


仕方なく真ん中の車両に乗ると、中はほとんどこれから会社に行く少しだるそうなサラリーマンで埋め尽くされていた。



久々の普通車両に少しびびりつつ、なんとか電車に乗ることができた。



会社がある銀座までは電車で20分。


いつもならiPodで音楽を聴くけれど、たまたま充電が切れていて聞くことができなかったので明日の休日の予定を頭の中で立てることにした。


朝起きて掃除機をかけて洗濯をして、午後からはずっと行きたかったネイルに行こう。

年が明けたのにデザインが未だにクリスマス仕様だし、マツエクのリペアもそろそろしたいし。


なんの興味もない電車の広告をぼーっと眺めながらそんなことを考えていると、お尻のあたりになにかが当たるような違和感があった。



最初は電車の揺れのはずみで鞄が当たっているのかと思っていたけれど、その違和感がだんだん人間の肌の感覚だと気づき始めると、突然血の気がサーっと引いていく気がした。



なにこれ、この年でまさか痴漢?


いや私もう29なんですけど…?!



頭の中が完全にパニックになる。

やっぱり電車を見過ごしても一番前の車両に乗るべきだっただろうか。


そんなことを考えている間にもその手がだんだん大胆に動き始める。




「っ…」



焦りが恐怖に変わり、思わずぎゅっと目を閉じた。




――すると次の瞬間、誰かに腕をぐいっと引かれ、体がいつの間にかドアの端のほうに寄せられていた。



当然お尻を触っていた手は離れ、代わりに誰かが私を覆うようにして目の前に立ってくれている。


満員電車のせいでその人の顔が見えないが、スーツを着ている男性だということだけはわかった。


その人はサラリーマンなのにやたらいい香りがして、今はそれを感じるだけで精一杯だった




なにもかもが一瞬の出来事で全部を把握しきれない。


29歳になって痴漢されるのも恥ずかしくて、そんな自分が信じられなくて、でも助けて欲しくて。



処理しきれずにいっぱいいっぱいになったその時、




「高山さん」




誰かが小さな声で私の名前を呼んだ。

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