第14話
どこにでもあるような出会いだった。
気づけば追っていた視線は、幼さのあまりすれ違っていった。
大切な人を失って、大切な人の存在を自覚した。
月奈を…大切だと思った。
それからは毎日一緒に過ごして、ふざけて笑って、お互いを叩きあった。
月奈が遠くに行ってしまうことがわかってからも、月奈のそばを離れたくなかった。
同じ趣味のCDや映画は全部俺の部屋にある。
月奈が部活のコンクールで入賞できなかった時、その悔し涙が止まるまでずっと寄り添っていた。
勉強をすると必ずと言っていいほど眠くなってしまう月奈の寝顔を、何度見つめただろう。
そして月奈を送り届ける帰り道には、一体どれだけ会話をしただろう。
今1人きりの帰り道には、桜の蕾がもう膨らんでいる。
冬が嫌いだった。大嫌いだった。
なのにどうして今は、冬が終わってほしくなかったと思うんだろう。
君が大好きだと言っていた桜が咲かなければいいと思ってしまうのは…、
きっと君のいない春のほうが、考えたくないほど大嫌いだからだ。
嗚呼…。
もうなんで…なんでだよ。
「月奈っ…」
もっともっと名前を呼びたかった。
君の声を近くで聞いていたかった。
くだらない話をたくさんしたかった。
写真には納まりきらなくらいの思い出がこれからもほしかった。
笑顔を、見ていたかったよっ…。
「つき…なっ…」
なんで一番近くにいて、一番大事なことを伝えられないんだろう。
月奈の笑顔も、夢も、願いも無視して、自分の思いを伝えればよかった?
そうやって月奈をこれ以上独り占めして、“好きだ”って言葉で縛って一緒に過ごしていたならよかったのだろうか。
「うっ…けほっ」
ずっと、この日が来るってわかってて一緒にいたんだ。
だから、もういい。
もういいんだ。
もう…もう意味なんてないから。
でもっ…、
君に届かない、1人きりの今なら、願ってもいいだろうか。
伝えてもいいだろうか。
苦手な冬の空から、大嫌いな春の、
夜空の下で。
“寂しい”
君にずっとそばにいてほしかったこと。
“ごめん”
君に謝りたかったこと。
“行かないで”
本当は離れたくなかったこと。
“ありがとう”
君にお礼を言いたかったこと。
“好き”
君に、一番…伝えたかったこと。
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