第13話

「じゃあ、明日ね」



そう言って月奈が離れていく。





「月奈っ!…っ、けほっ」




ドアを開けて家に入ろうとする月奈を、思わず呼び止めてしまった。

急に声を張り上げたせいで、少しむせる。



そんな俺を見て、月奈はいつものように笑って「大丈夫?」

と言ってくれた。




「月奈…」


「ん?」


「つきなっ…」


「ふふっ、何…」


「………」


「………」


「…向こう行っても、元気でね」


「っ」




――なんで。




なんでこんなことしか言えないんだろう。




「そういうことはさっ、明日言ってよっ」




月奈は呆れたように、吹き出したように笑った。



でも、声が震えていた。




肩も、震えていた。






「じゃあねっ…伊吹」





ぱたんとドアが閉まる。



それとほぼ同時だった。


我慢していたものが、ぷつりと切れたのは。



「っ…」



――こんな風に泣くのは、月奈と墓の前で泣き腫らした時以来だ。



こんな風に泣きながら、夜の道を歩くのは初めてだ。



なんて情けなくて、なんて惨めな姿だろう。



…でも、仕方ないじゃないか。





“もー、顔全然見えないよー”



“真冬のディズニーランドでアイスクリーム食べて”




君のテンションを、





“ねぇねぇ、マックさ、朝日さんたちにも買っていってあげようよー!”



“伊吹には多め!!”



“伊吹の、痛みを知りたい”




君の優しさを、




“3月のくせに今日マジ寒い。やばい”


“全然寒くないよー!それより見てこの耳!持ってきた!!”


“うわー歳考えてよ”


“伊吹の分もあるよ。この間来た時に買ったやつ”


“何持ってきてくれてんの”




君との会話を、




“伊吹~!今度あれ乗ろう!あれ!!”





君の笑顔を思い出したら、涙が溢れて止まらなくなってしまう。

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