第10話

平成4年生まれは不遇だと聞く。


特に天気に関しては事あるごとにイベントを災害でつぶされることが多かった。



でも大学の卒業式の今日、天気は晴天。


心なしか温かい風が吹き、春を感じさせるような陽気だ。



見慣れない袴を着た女の子たちはお互いに抱き合いながら涙を流している。


何百人もいるだだっ広い会場の中で、俺はただ1人、月奈を見つめていた。


彼女も泣いていた。

いつもしないくせに30分もかけてしていたメイクは、完全に崩れてしまっていたけれど、顔をくしゃくしゃにして泣く彼女を見ていると、なんとも言えない気持ちがこみ上げてきた。




―――――――……






「みんな卒業おめでとー!!かんぱーい!!!!」



式のあとの卒業パーティーは有名なホテルのレストランで行われた。



「社会人になっても会おうと思えばみんな会えるよね」


「もちろん!いつでも誘ってよ」



そんな会話があちこちで聞こえてきて、お酒が入って盛り上がりもピークになってきたころ、俺と月奈は同じサークルだったメンバーのテーブルに集まっていた。



「でも月奈は明日からボストンかー。一緒に卒業旅行もいけないなんて寂しいよ」



もうすでに酔っ払って顔を真っ赤にしているガッツが、目を潤ませながら話し始める。


それにつられて他のメンバーも少し顔をゆがめながら、月奈に話しかける。



「月奈、向こうに永住するって本当?」


「うん。お父さんとお母さんは中学の時から転勤で向こうに住んでるし、私ももう2人と離れて暮らすのは嫌だから。それに、英語もたくさん学べるしね」


「たまにはっ、帰ってきてね」


「ふふっ、もちろんだよ」


「っ、うー、月奈と会えないの本当っ、嫌だっ…」


「もーよっちゃんー、泣かないでー」



月奈は泣いて顔を覆う友人を、自分も涙を溜めながら必死に慰めていた。



俺はそんな様子を、少し離れた席で見ていた。




――“向こうに永住するって本当?”





この事実を、俺はもう7年も前から知っていた。



高校に入学するとき、月奈の父親の転勤がアメリカに決まり、月奈は東京の親戚の家に一時お世話になることが決まった。



月奈はもうすでにその時“日本で大学を卒業したら、必ず家族と暮らしたい”と言っていた。




俺も、それが一番いいと思った。




母さんが死んだとき“家族”という存在は、何にも変えられないものだと気づいたから。



人はいつ死ぬかわからない。



月奈も、月奈の両親も。




だからこそ、一緒に入れるときに一緒にいるべきだと思った。


    ・・

そして、それは月奈の夢にも繋がることだから。






海外で英語を学びたいという、月奈の夢に。

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