第9話
――いつものように月奈を家まで送り、家へ帰ってから何かに取り憑かれたかのように、俺は部屋のクローゼットの奥にある何冊もの分厚いアルバムと、アルバムに貼りきれなかった何枚もの写真を取り出して眺めた。
俺が写っているほとんどの写真の隣には、月奈がいた。
小学校の遠足、中学校の体育祭、高校の卒業式、大学の学祭。
小学校の高学年から中学2年生にかけて写真が少ないのは、月奈と一緒にいることが少なかったから。
月奈は写真が好きで、撮れば絶対にこうして焼き回しをして俺にくれた。
今はデータにしてパソコンで管理ができるのに、それでも月奈は必ずこうして写真にして渡してきた。
一緒にいるとなかなか気づけないけれど、こうして見ると月奈はこの16年で本当に綺麗になった。
きっと告白されることもあっただろう。
俺が知らないだけで、好きな人ができたこともあったんじゃないかな。
「ふっ、変な顔…」
写真の中には写りのよくなかったり、ピンボケしているものもあった。
それでも厳選せずすべて渡してくるとこらへんが、なんとも月奈らしい。
俺はそんな中から、月奈がとびっきりの笑顔で笑っている写真を見つけ、真っ白な壁にその一枚だけを画鋲で刺して飾った。
高3の、文化祭のときの写真だ。
俺と月奈はクラスや部活の出し物の当番で、その時一緒に回ることができなくて、無理矢理当番を抜け出して月奈の吹奏楽の最後の演奏を見に行ったら、あとからカンカンにクラスの委員長から怒られて…。
この写真は演奏が終えた月奈が一緒に撮ろうと言って撮った時の写真だ。
月奈は本当に嬉しそうに笑ってくれていたから、怒られたことなんて全然反省しなかった。
俺は、月奈といれば幸せだった。
「けほっ…」
月奈が笑ってくれれば、それだけでよかった。
この笑顔が、本当に大好きだから。
あと5日で月奈はいなくなってしまう。
「けほっ、けほっ…っ」
今俺にできるのは遠くへ行く彼女を、笑って見送ってあげることだった。
月奈の決断が鈍らないように。
俺の気持ちが、溢れないように。
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