第4話

―――――――……




「え、月奈もう帰るの?」


「うんバイトー。また来ます~ご馳走様でした」


「家まで送ってくる」


「月奈またね」


「気をつけてね」


「ありがとうございますー」




お昼を過ぎて、月奈と一緒に再び寒い外に出た。


今日は風が強くて、雲も分厚い。

年が明けたのはちょうど一ヶ月前で、2月になりより一層外は冷え込んでいる。



今日は雪が降りそうだ。



「もうちょっとでバレンタインだねー」



空を見上げていると、白い息を吐きながら月奈が思い出したかのように呟く。



「今年は何がいい?」


「生チョコ」


「伊吹本当生チョコ好きだよねー。朝日さんたちは何がいいかな?」


「適当でいいよ」


「えーでもお世話になってるし、毎年あげてるし」


「…じゃあ俺が一番量多くして」


「ふっ、それ去年も言ってた」


「だって嫌じゃん」


「ふはっ、わかりましたー」




俺たちは…もう16年も一緒にいる。




でも、“恋人”ではない。



小学校から大学まで、志望校もクラスも全部一緒。


ここまで腐れ縁が続けば隣にいるのがもうあたりまえになってる。



お互いが、お互いを自然と必要とする存在。


なんて呼べばいいのかはわからないけれど、気づけば離れるに離れられなくなっていた。



22歳になっても俺たちの関係は不安定だ。

でもきっと、月奈には言わなくても伝わっている。



だから俺たちは16年間、お互い恋人を作らず、こうして毎日のように一緒にいる。



まるで“恋人”のように。




「送ってくれてありがとう」


「ん」


「じゃあまた明日ね」


「…また明日」



笑顔で手を振って、月奈は家の中へ入ってしまった。


パタンとドアが静かにしまる。

今日もまた、いつもと同じ「また明日」の挨拶。


あたりまえの挨拶。




俺は閉まったドアを少し見つめてから、元きた道を1人で戻った。


今度は空を見上げることはなく、マフラーに顔を埋めたまま歩いた。




ひらひらと雪が降り始めてきた。



寒い。



…やっぱり冬は、苦手だと思った。

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