第35話

「いらっしゃいませ。今夜はお越しくださいまして、誠にありがとうございます。お料理の方はお口に合いましたでしょうか」



深々と頭を下げる赤羽さんと呼ばれるその女性は、とてもとても綺麗な女性だった。




――“じゃあ見た?俺が女の子と歩いてるところ”



そしていつだったか、千幸さんと本屋で腕を組んで歩いていた女性だった。





――“溝の口駅の近くのカフェで働いていたこと、ありますか?”



――“ないよ”




ねぇ、千幸さん。





――“間宮さんはデザートも得意なんですね”


――“いやー全然”


――“メニューでおけばいいのに”


――“いや無理でしょ”




どれが嘘?





――“言っとくけどあれ彼女じゃないから”



――“女の人は強くて…でも弱い。それを知ってるから”





どれが本当だった?





――“俺はさ、泣いている人を笑顔にするより、泣きたいのを我慢している人に…ただただ泣いて欲しかったんだ”





もうあなたの本音を聞くことはできないのでしょうか。




――“千幸に甘いものの話はすんなよ”




――“俺も同情したの、咲の過去と、可哀想なフラれ方に”





でも今私が思っていることが本当だったとしたら、





あなたの優しさは、






――“全部忘れてくれていい。俺のこと…全部”



――“俺も、咲のこと好き”





――“だから嬉しかった。咲が泣いてくれて…”








きっと、間違ってる。

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