カシスケーキ

第31話

「安藤さんこれ。頼まれてたレシピ」


「わーありがとうございます!カシスケーキ!!いいですね!!」


「うん。砂糖も控えめのレシピにしてあるからきっと大丈夫だと思うけど」


「先生、もしかして徹夜ですか?」


「え」


「目、ちょっと腫れてるような気がして」


「あ、ううん全然。じゃあまたなにか作り方わからなかったら言ってね」


「はい、ありがとうございます」



――安藤さんにレシピを頼まれて1週間後。


結局千幸さんにアドバイスを聞くことはできなかったから、自分でなんとか知恵を振り絞った。


一番最初にでてきたのは、やっぱりあの時溝の口のカフェで食べたカシスケーキだった。



あのケーキは甘さよりも先に、カシスの風味が広がって、その後に甘酸っぱさが広がって、誰でも食べやすい味だったような気がしたから。



完璧にあの味を再現することはできなかったけど、この1週間でなんとか似たようなケーキを作ることはできた気がする。



そのせいで1週間カシスケーキばかり食べていたような気がする。


ついでに先生たちにもいつも差し入れしていた。

まあ先生たちは喜んで食べてくれていたけれど。





2年の教室から職員室に戻り、はーっとため息をついて手元にあったスマホで自分の顔を写した。



「目…腫れてるのわかるかな…」




決して徹夜をしていたわけではない。



ただ毎日料理をするたびに、千幸さん事が頭をよぎって、涙が止まらなくなってしまうだけで。



ああやばいな、これ。


早く忘れなきゃいけないのに。


やっぱり私って相当重い女なんだ。





「椿先生」

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