第29話
ああ、なんだ。
私はやっぱり、あなたのことが好きだ。
あなたの特別になりたいんだ。
振り返ってあなたを見つめた瞬間、心の中が一気に愛しい気持ちで溢れた。
あなたが誰かに優しくしてると思うと苦しいだなんて、そんなの好き以外のなんでもない。
傷つきたくないからって逃げてあなたを失ってしまうくらいなら、私は傷ついてもいいよ。
だって私が1人じゃないって思えたのは、あなたのおかげだから。
「今日生徒に初めて…先生が教えてくれる料理が好きだって言われました」
「え、まじ?すげー」
「千幸さん」
「ん?」
「私それを、あなたに一番最初に伝えたかったんです」
「…?」
「あなたに一番最初に言いたかったっ…」
「………」
「……この意味…、わかりますかっ…?」
驚くほど声は冷静に出た。
でも最後、ちょっと震えた。
そう自覚した瞬間、なんだか泣きそうになって、心臓がうるさくなってきて、あなたの前から逃げ出したくなってしまった。
「咲」
今名前を呼ばないでほしい。
顔が熱いから。
泣きそうだから。
心が壊れてしまいそうなくらい苦しいから。
「ごめん」
――その言葉で、苦しみは一瞬でかき消された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます