第24話
陸先輩は食べるだけ食べて満足したのか、座敷で座布団を布団にして眠ってしまった。
お酒も飲んでいたし、少し酔っ払ってしまったのかもしれない。
千幸さんもしばらくぼーっとしていたから黙って卓上の上を片し、綺麗に空になったお皿をキッチンに運んだ。
静かな店内にはお皿とシンクがこすれる音と、蛇口から流れる水の音だけがしていた。
なんだか体がふわふわする。
さっきの2人の笑顔を思い出すと、まるで今起きていることすべてが夢だったみたいだ。
本当に不思議な感覚だ。
「咲」
ふと名前を呼ばれ、振り返ると少しうとうとした様子の千幸さんが立っていた。
「あ、千幸さん。短い間でしたけど今日までお世話になりました」
「………」
「…?」
「水…」
「あ、ちょっと待ってください」
私は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、今洗ったばかりのグラスにそれを注いだ。
「わっ」
――その時、肩が急に重くなった。
顔のすぐ横には綺麗な顔と回された腕。
背中にぴったりとくっついている千幸さんの体から体温を感じると、持っていたコップを落としそうになった。
「な…千幸さ…水」
「いい。いらない」
「え、何言って…」
「咲がいい」
「は…え、ちょ…」
腕を払おうと小さく肩を揺らしたけれど、千幸さんはより抱きしめる力を強くして離れようとはしてくれなかった。
すぐ隣で千幸さんの吐息を感じて指先が痺れる感覚がした。
「咲…俺のこと嫌い…?」
「き、嫌いなわけ…」
「じゃあ好き…?」
耳元で、こんなこと囁くのはずるい。
思わずくらっとしてしまいそうになる。
私は緊張してでない言葉の変わりに何度も何度も頷いた。
「ふっ…」
小さく笑う千幸さん。
「俺も、咲のこと好き」
「っ」
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