第20話

障害のある弟だって、暴力をふるう父親だって、ため息ばかりつく母親だって、嘘をつく彼だって、傷つけてしまった玲菜だって、みんな私にとっては大切な存在だったのに…。




「どうして…離れちゃうの…」


「………」


「私、なんだってするのにっ…」


「咲」


「1人はっ…いやなのっ」


「っ」



そう言って爪の跡が残るくらい千幸さんの腕を握った。

それでも千幸さんはそれを振り払わず、より一層私を強く抱きしめてくれた。




「…何、言ってんの」


「っ…う」


「いるじゃん。咲の周りには…同僚も生徒も、俺だっているじゃんか…」


「っ」


「大丈夫、そばにいる」


「千幸さ…」


「咲は、1人じゃないよ」






惨めで哀れで…どうしようもなく弱い。







「頼むから…泣かないで」




だから私、必死に叫んだの。

聞こえないとわかっていても、叫んだの。




ずっとずっと“寂しかった”のだと。




ねぇ千幸さん。

この声にならない叫びを…あなたはまるごとすくいあげてくれますか…。



私はあなたといるとなぜかとても泣きたくなるのです。


普段我慢できるはずのものが、あふれ出して止まらなくなるのです。




ねぇ、それは、なぜですか…。

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