愛すのなら
第18話
千幸さんのお店でお手伝いを始めて3日目。
お店の開店時間まで少し時間があったから、私は久しぶりに溝の口のカフェに行くことにした。
いつもの席に座り、いつものようにブレンドコーヒーを頼む。
スティックシュガー3本にミルクを2個。
体にいいのはブラックだとわかっているけれどこればっかりは苦いままでは飲めない。
カフェオレではなくブレンドにミルクが好き。
「ふー…」
私はできたてのコーヒーを口に運び、その暖かい香りと味に酔いしれた。
この瞬間が、本当に大好きだ。
5ヶ月前にここに来たときとは随分違った気持ちでこのコーヒーを味わうことができている。
あの時は…もう二度と歩けないと、もう誰も信用したくないと本気で思っていたけれど、時間の流れとは不思議だと思った。
それと同時に残酷だとも思った。
いつか全部なかったことにできるのだろうか。でも…それでいいのだろうか。
なんとなく店内を見渡してみる。
やっぱりあの時、カシスケーキを作ってくれたであろう人は見当たらない。
そのまま視線を窓の外に移した。
――と、その瞬間心臓がどくんと音を立てた。
慌てて顔を店内に戻す。
「なんでっ…」
窓の外には、玲菜がいた。
そしてその隣には、祥馬がいた。
楽しそうに腕を組んで歩く2人がそこにはいた。
2人は幸い私には気づいていなかったけど、私は大きくなった鼓動と熱くなる体を押さえることができなかった。
「っ…」
あの日のことがまるでこみ上げるように思い出される。
――“さいってー…”
あの日、何通か届いたメールは大学時代の友人からのものだった。
『友達の彼氏を奪うなんて最低』
『玲菜が可哀想』
『尻軽女』
祥馬が言わないでっていうから、祥馬と付き合ってることは大学の友達には伏せていた。
確かに玲菜と別れてすぐに私と付き合えばいい気はしないだろうと私も便乗した。
それがこんなことになるだなんて、思ってもみなかった。
私は祥馬と付き合ったせいで一体何人の友人を失ったのだろう。
みんな、大切だったのに。
「うっ…っ」
みんな大好きだったのに。
「っ…は」
呼吸が乱れる。
「ぅ…」
息が苦しい。
『1人じゃないよ』
ねぇ誰か、助けて。
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