第15話
そんなこんなで、またまた先輩に押された私は1週間だけ百合桜を手伝うことになった。
お給料をもらうには問題があるので、夕飯を食べさせてもらうという条件で。
オーダーを伝える度に間宮さんは私に対して申し訳なさそうな顔を向ける。
先輩が私をつれてきたときも、間宮さんは猛反対をしていた。
最初は戸惑ったけれど、私はむしろずっと飲食店のバイトをしてみたかったのでやっていて楽しかった。
ちゃっかり間宮さんの料理を盗み見ることもできる。
主に注文を取りにいくのは物覚えのいい陸先輩で、私はキッチンを中心に働き、時々ホールにも回った。
初めてきたときも百合桜は女性のお客さんが多かったけれど、今日もまた女性客が多い。
そのせいか先輩もハキハキと動き、時にうはうはデレデレしていた。
女性たちもいつもと違う店員にはしゃいでいるのがわかる。
確かに先輩は大学の時もモテていたが、私には先輩のよさがまったくわからない。
そんな先輩を一瞥し、今目の前の仕事に集中した。
レシピを見ればたいていの料理は作ることが出来たが、要領をまだ把握しきれない私と間宮さんでは料理を出す速さが違った。
どうやったらあんな手際のよさが身につくのだろうか。
間宮さんは慣れだと言っていたけれど、やはり料理の才能がないとできないことだ。
私はその細くて強張った腕や、真剣に料理を作る瞳に少し見惚れていたことに気づき、慌てて手を動かした。
そして夜中の0時に店はようやく閉店した。
陸先輩は終電が早かったので先に帰ったため、今お店には間宮さんと2人きりだ。
男の人と2人きりという状況が先輩以外で久しぶりだったからなんだか緊張する。
陸先輩は帰り際に間宮さんに「咲を食うなよ」と忠告していたけれど、私から見れば先輩のほうがよっぽどチャラチャラしている。
でも実際どうだろう。
確かに間宮さんは女性なら誰にでも優しい。
お客さんが間宮さんを誘うような会話は今日1日だけで何度も見たけれど千幸さんは嫌な顔1つせずに笑って受け流していた。
これも慣れってやつなのだろうか。
「椿さん、お腹空いたでしょ。なんか作ろうか」
「あ、いやさっき休憩の時にいただきましたし、それに終電もきちゃいますし」
「送ってくよ、俺車だから」
「そういうわけにはっ」
「そっかー、デザートいらないかー」
「…う……」
「ふっ」
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