第12話

そして夏休み前日。


学期末の仕事を終え、先生たち全員で飲み会を開いた。


今日の幹事は陸先輩で、先輩は飲み会の場所に間宮さんのお店を選んだ。

この間は他のお客さんもいたけれど、今日はほとんど貸切だ。



「「「かんぱーい!」」」



全員でグラスを合わせて、今夜は教師ということを忘れて美味しいお酒をどんどん頼んだ。


普段は堅苦しいイメージのある教頭もすぐに顔を真っ赤にしていた。

うちの学校の先生はとても仲がよくて、よくみんなで飲み会やフットサル大会をしている。


私は担任も持っていないし、ほぼ顧問のような位置なのでそれに参加することはほとんどない。


そのせいかこういう大勢での飲み会は少し苦手だ。




「これ下げますね」



そう言って夏目君が空いたお皿とグラスを下げていく。



「あ、私も持ちますよ」


「いいですよ、あんたお客さんでしょ」


「こうしてる方が楽なんです」



そう言って夏目君と一緒にお皿を持ち、カウンターまで持っていった。


少しだけドンチャン騒ぎしている声が小さくなった。



「あんた家庭科の先生なんでしょ?陸から聞きました」


「はい。えっと夏目君…でしたよね?」


「俺の方が年下なんで敬語使わなくていいですよ」



話によると夏目君は調理師の専門学校の学生らしい。

ってことは未成年…。


大人びて見えるから同い年くらいかと思っていたけれど、よく見ればその綺麗な顔立ちに幼さが残る。

ジャニーズとかにいそうな典型的なモテ顔だ。



「こうしてる方が楽って、世話焼き?家庭的なタイプだ」


「そういう風に見えますか」


「でも俺、そういう女嫌い」



でもその顔立ちからは想像できないほど、彼の言葉はどこか冷たく、つんとしている。


きっとその言動で、数々の女性を泣かせてきたのだろう。



「だから彼氏にもフラれるんですよ」


「っ、なんで知ってるんですか」


「この間陸と来たとき聞こえました。あの人声大きいから」


「あ…」



私は座敷にいる先輩をきっと睨んだ。

彼は完全にお酒に酔っていてまったくその視線に気づいていないけれど。



「さっきからあんた全然飲めてないでしょ。先輩にも後輩にも気遣って」


「………」


「そういうの前の彼氏にもやってたんでしょ」



言い返すことができなかった。

…図星だったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る