気遣いのできる人
第11話
期末テストが終わり、残り数日で夏休みだ。
生徒たちはテスト疲れと7月の暑さにすっかり参っているようで、長い休みを今か今かと待ちわびている様子だった。
職員室も補講の準備やら夏休みの部活の日程調整やらで忙しなかった。
私はギリギリまで学校に残り、仕事を終えた後、よく行く駅前の本屋に立ち寄った。
文庫本のコーナーを一通り見て、料理雑誌で立ち読みをする。
料理は常に新しいものが増えていくから、こういう情報収集は定期的に行わなければならなかった。
ついでに今日の夕飯も決めてから帰ろうと思った。
ふと少し視界が暗くなり、男性が私と同じように隣で立ち読みを始めた。
男性が料理本って珍しいなと思いなんとなく目を向けると、そこには見たことのある男性が立っていた。
その人は2週間前に陸先輩につれていってももらった居酒屋にいた間宮さんだった。
彼は私にまだ気づいていなかった。
初めて見た私服姿の彼は、それはもうとてもモデルのように格好良かった。
芸能人を見たような、そんなドキドキに襲われる。
間宮さんのお店は和食中心の居酒屋だったけれど、彼が今呼んでいるのはデザートの特集の記事が載っている本だった。
デザートも作るのかな。
声をかけようかと思ったけれど、1度しか会ったことのない私を覚えているだろうか。
「ちーさ」
迷っていると、誰かが間宮さんを本棚の向こう側から呼んだ。
女性の声だった。
「あ…」
間宮さんは雑誌を戻し、彼女に近寄った。
そしてその女性は間宮さんの腕に手を回し、楽しそうに会話をしながら本屋から出て行ってしまった。
「彼女…いたんだ」
当然だ。あれだけ格好良かったら。
先輩がチャラいって言ってたし、もしかしたら“そういう”遊び相手かもしれない。
…とても綺麗な人だった。
1度しか会ったことのない人なのに、私は間宮さんのことをよく知りもしないのに、なぜか心が少しだけ痛んだ。
あの2人の関係が例え恋人同士でもそうでなくても“今”のあの2人は、お互いがお互いを必要としている。
そういう関係があるだけでも、今の私にとっては羨ましかった。
間宮さんは、あの女性は今…1人ではない。
最低だ、こんな嫉妬心。
「私…汚い」
どうして私だけ…1人なの。
そんなの、汚いよ。
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