第10話

“虫歯ですか?”




あの日のことが、一気に頭に蘇る。


この香りといい、その言葉といい、どこかあの人と間宮さんは被る。

もちろん香水はどこにでも売っているものかもしれないし、新横浜からうちの地元の駅はそんなに近くはないし、その言葉だってたまたま言ったものかもしれないけれど、心なしかあの後姿が間宮さんに似ているように思えた。


黒髪に、モデルのようにすらっとした身長と体系。



いちかばちか、私は聞いてみることにした。



「あの…」


「ん?」


「溝の口駅の近くのカフェで働いていたこと、ありますか?」




…これだけ聞ければ十分だった。


ないと言えば勘違い。


あると言えばお礼を言いたい。



あの時の私は…あなたに救われた、と。





「ないよ」





彼が少し笑って発した言葉。



私は“そうですか”と呟いて、間宮さんに謝った。



そんな私たちを不思議そうに見つめる先輩。



間宮さんはごゆっくりと言ってその場を去っていった。



彼が作ってくれたチーズオムレツは、本当に泣きたくなるくらい美味しかった。

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