第7話
腕をぐいぐい引かれ、学校からいくつか駅を乗り継いでたどり着いた夜の新横浜。
ネオンがキラキラしていて人気も多い。
さすが神奈川の都会だ。
生徒や他の先生に会わないかハラハラしながら、駅の少し入り組んだ道を進む。
するとそこに真新しい料亭のような小さな居酒屋が見えてきた。
オレンジ色のライトがぽおっと灯るような、少し趣のあるその建物は、なんとも新横浜らしいオシャレな雰囲気だ。
看板には『百合桜』と書いてある。
「ちっすちっす!」
そんなオシャレな雰囲気もぶち壊すかのような勢いで先輩はへんてこな挨拶とともに店に入っていった。
居酒屋はカウンター席もテーブル席も満員で、一番奥にある座敷の席だけが唯一空いていた。
場所も場所だしサラリーマンが多いのかと思っていたけれどそうでもないみたいで、むしろ女性の方が多いような気がした。
「夏目くーん。奥座っていい?」
「うわ、陸また来たんすか、今週4回目なんですけど」
「数えててくれて嬉しいハート。本当は毎日夏目君とチサに会いたいんだけどね~」
「きもい。座敷どうぞ」
“夏目君”と呼ばれるその人は先輩を見てものすごく嫌そうな顔をした。
しかし先輩に構ってる暇はないくらいお店は忙しそうだった。
どうやらホールを1人で回しているみたいだ。
そんなの気にも留めず先輩は夏目君に話しかけ続ける。本当に迷惑な人だ。
先輩の高校の同級生のお店と言っていたけれどその“同級生”は夏目君のことだろうか。
確かに彼はとても顔が整っているし大人びて見えるけれど、先輩に対して敬語を使っているし、なんとなく私と同い年くらいに見える。
それとも先輩が言っている“チサ”という女性が先輩の“同級生”なのだろうか。
いい加減夏目君が鬱陶しそうにしてたし、他のお客さんが夏目君のことを呼んでいたから、私は先輩を引っ張って大人しく座敷に座らせた。
こんな迷惑な人が週4で通いつめていたとしたら、夏目君の最初の嫌そうな表情にも納得がいく。
「いやー腹減ったー!何食う?あ、とりあえず生でしょ?夏目くーん!生2つ!!」
「先輩、声うるさいですまじで」
「ここのオススメは焼き餃子と牛すじ煮込みだね!唐揚げも他で食べるよかずっと美味いけどチサの作るチーズ納豆オムレツはもう絶品!!」
「………」
本当にこの人は高校教師だろうか。
先輩の声の大きさはもはや高校では名物のようになっているが2人きりで飲んでいるときにそんなに声は張らなくていい。
これで体育の先生ならまだ納得だけど、先輩は数学教師だ。
しかもその実力は数学オリンピックの日本代表に選ばれるほどだっていうから驚きだ。
その計算高さで数々の女性を落としてきたのだろうか。
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