第6話

夕方5時。


時間も時間だし、土曜日の校内は部活動が終われば生徒もほとんどいない。



今職員室にも日直私と、バスケ部の顧問の真鍋先生の2人きりだ。



私は来週ある期末試験のテストの答案用紙をパソコンで作成していた。



すると突然キャスター付きの椅子に座ったまま、真壁先生が私の背もたれにゴンッとぶつかってきた。

私は無視した。



そしてその3秒後、再び背もたれに衝撃が走る。



「椿せーんせっ」


「………」


「おいこら先輩を無視すんな」


「…仕事してください」


「俺この後彼女とデートの約束だったんだけどードタキャンされたから飲みに行こう」


「仕事してください」


「終わった終わった」


「お疲れ様デシタ」


「もー!咲ちゃん冷たいっ」



私が軽くあしらって再びパソコンに目を向けると、真壁先生は何度も何度も私の肩を揺らして『奢るから飲みにいこうよー』と誘ってきた。


まるで子供のようだ。大学時代とまったく変わっていない。



「真壁先生は飲みに行きすぎだし、遊びすぎですよ。生徒に示しがつきません」


「ほんっと咲ちゃんって昔っから真面目ー」


「学校で下の名前で呼ばないでください」


「さーくちゃんっ」


「………」



…本当に先生だろうかこの人は。


生徒といても先生といても年がら年中ふざけている感じが否めない。



真壁陸(マカベリク)先輩は2つ年上で、大学とサークルが同じで、何の縁か着任した高校までもが一緒だった。

新卒で入ったとき、先輩がいたことにとても安心したが、今では都合のいい飲み仲間として振り回される始末だ。



「新横の駅近にさ、俺の高校の同級生が最近オープンした居酒屋があるんだけどさ、あいつの料理がちょー美味いの!そこ行こ」


「行きませんて」


「絶対気に入るって!美味しいんだってば」


「…行きません」


「いく!」


「………」


「いこ!!」


「………」


「ね?」


「………」




…私は美味しい料理と……、先輩の押しに弱い。

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