スーパーで買い物 中編
同じクラスの不知火くんにナンパから助けてもらった。そして真剣な顔で彼は言った。
「これからはこういう道には1人で来ないこと。もっと自分を大切にして下さい。あなたを大切に想い、心配する人がいるはずです」
驚いた。私のことを心配してくれる人は今までもいたが、私のために怒ってくれる人なんていなかったからだ。
「話は終わりです。この先に目的地があるのでしょう?大通りまでは一緒に行きましょう」
表情と声色が和らぎ、優しく言ってくれる。
まだ彼の狙いが別のところにあるのではないかと勘ぐってしまう自分のことが嫌いになる。
ーもう一度人を信じてみようって決めたでしょうー
私が生徒会長に立候補した最大の要因はこれだ。過去の自分に囚われて他人、特に男性のことが信じられなくなってしまった自分を変えるために、まずは自分が人に信じられる人になる。そして他人のことを信じてみる。そう決めたはずなのに。
もちろん世の中の全ての人が屑でも聖人でもないことはわかっている。さっきの2人組もいれば、あの人のような男性がいるというのは頭では理解している。
大通りまで着いたとき、彼は「気を付けて」と言って別れようとしてきた。てっきり目的地も同じだから一緒に行こうと言われると思ったのに。
「あの、巻き込んですみませんでした。何かお礼させてくれませんか?」
人に何かしてもらったらお礼を返す。相手の要求に、自分にできる限り答える。借りを残さないために。
大抵の場合、食事やカフェなどに誘われる。そしてそれの終わりに再度食事や酷いときはホテルなどに誘われることもある。お礼の約束は一度だからと断ると、「気があると思っていたよ」や「助けてやっただろ」なんて返ってくる。
心からの善意で行動している人なんて果たしているのだろうか。
「あなたが謝ることは一つもありませんよ。それと、別に見返りを求めて助けたわけではありません。先程の人達と変わらない。それに急いでいたんじゃないですか?」
こんなことを言う人は初めてだった。
「なら一緒に買い物に行きませんか?お礼関係なくです」
「構いませんが、良いんですか?」
良いんですかとはなんだろう。
「間違いだったら申し訳ない。男性に対して苦手意識があるのかと思って」
き、気づかれていた…
「そ、そのことは本当です。でも他の人に言わないでもらえませんか?いずれ克服したいと思っているんです」
「そういうことなら勿論。その上で聞きますけど本当に良いんですか?僕と一緒で」
「はい!それともう一つだけ頼んでもいいですか?」
「なんでしょう」
「私の男性慣れを手伝っていただけませんか?」
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