第4話 手紙

さて、日は変わり、高校生活一日目。

教室で先生の話を聞いていると、春の麗らかな気のせいか、うとうととしている生徒が多く見られる。まだ入学式から一日しかたっていないのに。ちら、と教室の前の方を見ると、睡魔と戦う鈴と、それを柔らかい目で見つめる甘原の姿があった。

・・あの調子だと、クラスメイトたちが二人の気持ちに気づくのも時間の問題だと思うわ。

一限目の授業が終わって二人のところへ行くと、甘原が鈴に「おはよう」と声をかけていた。

「え、りん、私寝てた?」

「ああ」

「マジか・・やっちゃった〜」

「あら、わたくしも見てたわよ」

甘原の言葉で顔を赤くしていた鈴に声をかける。鈴は更に赤くなって、その場にしゃがんでしまった。・・いじめすぎたかしら。

「あ、二人とも。今日って何か予定はある?」

ふと思い立って聞いてみると、

「ない」

「私もないよ!」

と甘原の簡素な返事と、気を取り直した鈴の明るい返事が返ってきた。

「よかった。駅前に新しいカフェができたらしいの。せっかくだから、行ってみない?」

「行きたい行きたい!」

わたくしの提案に目をキラキラさせる鈴。甘原も嬉しそう。わたくしたちは、たまに三人で出かけたりするのだけれど、大体行き先はわたくしが決めるの。友達のいないわたくしとは違って二人は顔も広いから、色んなところに行ったことがあるのよね。わたくしは行きたくても二人と一緒じゃあないと行けないから。

「楽しみにいているわね」

二人に軽く微笑んで、自分の席へと戻った。

・・放課後、楽しみだわ。



カタン

「あら?」

一日の授業が終わり、下駄箱へ。靴を取り出そうとした瞬間に長方形の薄い紙のようなものが足元へと落ちてきた。

「なに?これ」

封筒?何かしら。

不思議に思って拾い上げると、それを見た鈴が

「はわぁ!」

と声を上げた。

「つ、つばき!それ、ラブレターじゃない!?」

「え?」

鈴は、とても楽しそうに、

「ね、りん。つばきってやっぱりモテるんだよね!こんなにかわいいもん!」

と話している。・・これ、本当にラブレターなのかしら。

差出人の名前は書いておらず、封筒には「宮里つばき様」の宛名のみ。

とりあえず封を切ってみると、中には便箋が一枚入っていて、一文だけ「校舎裏に来てください」と丁寧な字で書かれていた。

「校舎裏に来てください・・鈴の正解みたいだな。」

横から紙を覗き込んだ甘原が言う。

「勝手に見ないで。・・これって、行ったほうが良いのかしら?」

はて、と首をかしげると鈴が目を見開いた。

「絶対に行くべき!私とりんはここで待ってるから!」

「そう・・」

めんどくさいから本当は行きたくないのだけど。鈴が言うなら仕方ないわ。

「わかったわ。短時間で戻ってくるから、ここで待っていてくれる?」

「うん!」

鈴のキラキラとした視線を背中に受けつつ、体育館裏へと向かった。

・・手短に済ませましょう。早く二人のところに戻りたいもの。

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