後藤いつき

岬から風が吹いてくる。びょうびょうと耳に当たる。

こんなときだからか、普段は目に留めない岩なんぞをしばし見つめる。こういう形か、と思う。

岬の端には何もなくて、本当に何もないから時々人が死にに来る。

スカイダイビングをしてみたいと昔からぼんやり思っているが、飛び降りて死にたいと思ったことはない。どういう気持ちなんだろうか。想像したくもない。本当に、想像したくない。だから絶対にしない。

愛されて育った人、という言葉が昔から妙にひっかかる。

愛されて育った人。

人。

愛。

される。

されない。

する。

しない。

言葉でわからないなら図にしてみようと図を描いてみたこともあったが、やはりわからなかった。このまま一生ひっかかったままなのだろうか。あまり悲観してもいないが。

岬の端の崖際はたよりなくて、そこにつかまって膝をついて下を見下ろすのもおっかなびっくりだった。

真下では岩礁に波が打ち寄せて飛沫を上げている。

東映、という文字が頭をよぎった。何を言っているんだ私は、と思った。

でも悔しいから、私は意地悪だから、その後ずっと東映、東映、と頭の中で唱え続けていた。

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後藤いつき @gotoitsuki

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