第3話 粛清、愛情、その先へ
「下劣な悪魔め。死に晒せ!」
こいつらは生かしておいてはいけない悪魔だ。
クレアに手を出した、それだけで十分万死に値する。あれは私のだ。誰1人として手出しさせるか。
奴らの1人の首を掴み、持ち上げる。
「んごぉっ、て、っめ…!」
気道を絞められながらも睨みつけてくる面へ拳を叩き込む。鼻血、返り血。それにより自身があっという間に血に濡れれば、かつての感覚が背筋を走る。
「こ……こいつ……やべぇ……!」
突っ立っていた片割れ逃げるのを横目に見れば、掴んだ悪魔の片角をへし折り、投げつける。
投げられた角が綺麗に胸元へ深く刺されば血を吹いて倒れる。
「あとはお前だけだな……?」
「ひ、ひいっ……ごめんなさい……」
ぐしゃぐしゃになるまで殴りつける。
顔ちも、身体にも、私の勝利の証を書きなぐるように。
「ぺッ」
血塗れで倒れる悪魔へ最後に唾を吐き捨て、クレアの元へ急ぐ。
「……待ってろ、クレア……今すぐ行ってやる」
クレアと出会ったのは現世が退屈になってまもなくの時だ。耳にしたことがあるメディアの名を名乗り、メモとペンを持って私の家へ駆け込んで来た。
彼女を一目見た瞬間、独占欲が爆発した。"ああ、コレを私とモノにしたい"というどうしようもない欲が湧いて出てきた。
今までただ快楽のために人を殺してきたのが馬鹿らしいくらいに愛が湧いて出てきてしまった。ライトグリーンの瞳に吸い込まれ、緑がかった髪へ顔を埋め、初めての愛を噛み締めた。
それでも殺人は辞めなかった。目に付いた人間、気に入った人間、見境なく手に掛けた。その度に走る背の悪寒に取り憑かれ、まるで麻薬中毒の患者のようにそれを貪る。
狂っていたと言えばそれまでだ。だが、それが楽しくて仕方ない。殺したいから殺す。脊髄で動く単純な理由だ。
大手のメディアが嗅ぎつけた時、私はあっさりと死の決心をした。それにクレアはついてきてしまったのだ。それも愛おしい。
家に火を付け、気が遠くなるまでクレアと口を重ねた。
先にクレアが逝き、私はその体を強く抱き締めつつ、火に焼かれた──
「……待たせたな、クレア」
「アリィ!」
目の前の恋人を強く抱き締める。
あぁ、これだ。この匂い、この温もり、この息遣い。全て私だけのクレアだ……愛情に飢えた私の拠り所……
「私の為に怒ってくれるアリィが好き……」
「私の目にはお前だけしか映ってないからな」
「……アリィ……!」
赤髪の女。目の前にいるのは私が追い詰めた気になっていただけの、そこがしれない女。でも惚れてしまった。底なし沼に頭から飛び込んでしまった。それに後悔はない。死んだことも後悔してない。私の愛はあの日あの時あの場所で初めて与えられた時から変わっていない。
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