夢の中の少年
ママ、あのね、ぼく、よくおんなじ夢をみるんだよ。
そこはね【まどろみ】っていう町でね。ぼくは団地に住んでるんだよ。ママとパパと3人でね、1号とうの5かいに住んでるの。
ママは【まどろみ】って町、知ってる?
──うーん、わかんない。テレビで見たりとかはしてなくて、ちっちゃいころからずっとなんだよ。そっかあ、ママも知らない町なんだあ。ぼく、なんかさあ、ちっちゃいころに住んでた町なのかなあって思ってたんだよねえ。
それでね、そこはね、ぼくと同い年くらいの子どもがいっぱいいて、いっしょに公園であそんだりするの。──ううん、学校のお友だちとかじゃなくて、夢の中でしか会ったことがない子。お名前は……んー、わかんない。そういえば聞いたことないなあ。お名前じゃなくて「ねえ」とか「おーい」とかしか呼ばない。あ、でも「カオルちゃん」って子は知ってる。たまにいっしょにあそぶんだよ。
──えっとね、かけっこしたり、ボールであそんだり。
──そう、おせきは出ないんだよ。
だからいっぱいあそべるの。
もうちっちゃいころからよくみるからさあ、町のことぜんぶ知ってるんだよね。みんなのおうちの場所とか、お店の場所とか。あ、あとね、びょういんとかこうばんもあるんだよ。あとね、スーパーもあるし、だがしやさんもあるし。
ぼくはね、友だちといっしょに、町じゅう走ってまわってあそぶんだよ。でもね、川の、はしはわたれないようになってて、町の外には出られないんだ。いっつもなんだよ。だからね、町の外には出られないんだ。いっつも。
──学校? 学校はお休みなんだよ。
その夢、すっごい楽しくて、ぼく、しょっちゅうその夢みるんだけど、みるとうれしいんだ。
でも……いっこだけいやなところがあって。
なんかね、ずっとじゃないんだけど、音がきこえるんだ。
──そう、音。
なんかね、音楽じゃないと思うんだけど、ザワザワ〜とか、ピロピロ〜とか、ガガガガって感じ。それをきくとね、なんかあ……うまく言えないんだけど、ここが【まどろみ】って町だってわかるの。
ママ、ほんとうに【まどろみ】って知らない?
ぼく、なんだかね、生まれる前から知ってた気がするんだよなあ。あの町。そっかあ、ママ、知らないんだあ。
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