第3話 貴方の手紙




貴方が任務に出てから約三ヶ月。ある日のお昼時家のインターホンが鳴った。

しかしそこに貴方はいなかった。

そこに立っていたのは恐らく貴方のお仲間さんだった。

仲間の一人の髭面が私の前に人のサイズをした木箱を置いた。

そこで私は貴方と無言の再会をした。


そして今、貴方が私に手紙を残してくれているということを告げられ、たった今貴方の手紙が読み上げられる。


『柚乃へ。この手紙を読んでいるということは、俺は柚乃と誓った約束を守れなかったということになる。きっと髭面が読み上げてくれてるだろ。まず柚乃、

一人にしてごめんな。次会うときはあの世になっちゃうね。でも俺は柚乃と違って人を殺した犯罪者だ。だからもしあの世に行っても会えないかもしれない。

かなしいしさびしいよ。今まで一年間俺を支えてくれて本当にありがとう。

任務に出る前伝えた通り幸せになってくれ。俺についてるネックレスは捨ててくれ。最後に死んでも愛してる。さようなら。』


手紙が読み終わり静寂に包まれる。

私は貴方の亡骸のそばにしゃがみこみ、貴方の首にかかった汚れた

カーネーションのネックレスをを見つける。

震える手でそれに触れ、ギュッと握りしめた。

貴方の『愛してる』という言葉が胸の中で何度も反響し、涙が止まらない。


「ばか、。天国だの地獄だの関係ないよ、。貴方がいないならどこだって寂しいよ、。」


私は胸にネックレスを押し付けながらそう冷たい貴方に話しかける。

わかってても返答がないのはつらい。

そして貴方の左手を握り、貴方の傷だらけの顔に私は額を寄せる。


「貴方は私のすべてだったんだから、。幸せにしてくれてありがとう、。」


【だった】この過去形が嫌だ。


「これから幸せになる未来だったのに。」


と、胸の中では悔しさが立ち込めていた。

すると髭面が重い口を開く。


「奴は最後まで戦いつくした。最悪とも言われる戦闘者にも相打ちだが勝利し、ターゲットも殺した。ほんとにすごい奴だった。」


髭面の声は低く、敬意と悲しみに満ちている。

私は貴方のネックレスを握りしめたまま、二人組を見上げる。


「相打ち、。貴方、重傷を負っても生き延びようと必死に戦ってターゲットまで、。」


私は貴方のいた殺し屋の世界なんてわからない。だけど

貴方はすごいことをして、最後まで諦めなかったということは肌で感じていた。

そんな貴方の前でメソメソしている私はバカバカしくなった。


「最後まであきらめずに、がんばったね、お疲れ様。」


私は貴方に小さく微笑み貴方の頬にそっとキスをした。


「私も貴方のことこれからも愛してる。」


そう小さくつぶやいた。

ネックレスをそっと外し、胸に抱きしめる。

ネックレスをどうするか、貴方の願いをどう叶えるか、まだ心が定まらない。

でも貴方の愛を、存在を絶対に忘れない。このことだけは一瞬で心に決めた。


次回4話 夢

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カーネーションの約束 @smppi

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