一人称視点で綴られる、昭和レトロの風情漂う和風ファンタジー・ミステリーです。
語り手視点での情報の出し方と情景の映し方が上手く、すんなりと映像的なイメージが頭の中に浮かんできました。「視覚」を基本とした体感情報が印象的です。
文章もキレイで、表現力も高いと感じました。これは冒頭で描かれるのですが、探偵・百目と主人公・純壱での語りのコントラストが、それぞれの感覚的、背景的違いを描けていて見事です。
ストーリーに関しても、当方ミステリーには疎いのですが、冒頭で気になる謎が提示され、それを探偵たちが追っていく王道に近い構成で、初心者にも入りやすいです。
また、キャラクター間の因縁や感情の描き方が巧みで、個性豊かな人物ばかり現れるので、推しが見つかって物語展開にも感情移入しやすいです。ここは少し妖怪図鑑的な楽しみもあり、名前を知らなかった妖怪が出てきたときはついつい調べたくなります。
じっくり読み進めていきたい名作です。一“見”の価値ありです。