第3話 エリート獄卒の最初の街
「ハングリーベアーは金になるぞぉ!」
3人は
「なるほど、食糧になるんですね。」
「あぁ。ハングリーベアーの肉は美味いからな!
それだけじゃないぞ!」
ほら、とエドワードは切り取った角をこちらに見せる。
「この角なんかは200ゴールドは堅いだろうな。本当なら角を折って魔力回路を破壊してから討伐するんだが、ヤシャはそのまま倒しちまったからな。
キレイなままだと高値で売れる。」
角、と言われふと思い出し自分の額に手を当てる。
「ふむ。」
地獄ではあったはずの角はなくなっている。
ここでは人間の姿かたちにはなっているようだ。
「どうした、ヤシャ。血を見るのはキツいか?」
額に手を当てる私をみて、ガイが
「あ、あぁ。いえ。大丈夫です。続けてください。」
「そうか。……おっ、とれたぞ!」
ガイははんぐりぃべあぁの体内から腕を抜くと、赤黒い宝石のようなものを見せてよこした。
「それは……」
「魔石だ。ほとんどの魔物にはコイツが埋まってる。コイツは高く売れるし、討伐の時に破壊すれば一発で仕留められるってワケだ。……まぁ一発で破壊ってのは無理な話だろうけどな。」
「なるほど。先程光っているように感じたのはソレでしょうか。」
そういえば、はんぐりぃべあぁを倒す時に心臓あたりに見えた赤黒い光とよく似た色合いだ。
「……!ヤシャは魔石の光が体内からでも見えるのか!」
エドワードが驚いたようにこちらを見る。
「ふつうは見えないものなのですか?」
「あぁ。見えるのは、魔力量の多い奴か、鑑定スキル持ちくらいだ。」
……魔力、ですか。
「ヤシャは自分のスキルとか魔力量はわかってるのか?」
不思議そうな顔をしていたのが分かったのだろうか。
「……えぇ。あまり分かりませんね。」
実際、地獄で魔力なんてものは常識のうちになかった。
魔物、魔力……どうやら本当に異世界には来てしまったみたいですね。
「まあ、その辺りは街で測ることもできるしそんな深く考えなさんな。
……さ、解体もおわったし改めて街に行くか!」
私がいろいろと考えを巡らせて見学している間に3人はテキパキとはんぐりぃべあぁを解体し、すべて収納した様だった。
「さ!ヤシャさん!こっちです!」
そうして私は3人に連れられて、異世界で初めての“街”へと向かい始めた。
◇◆◇
「ヤシャさん、ここが僕らの街、エーデルロイドの冒険者ギルドです!さっそく換金に行きましょう!」
イワンに手を引かれ、木造の建物に連れていかれる。
「ぼうけんしゃ……。」
「おかえりなさい!蒼の
若い人間の女性がにこやかに迎え入れる。
「依頼達成のご報告ですか?」
「あぁ。ゴブリン討伐の達成報告だ。
それから……コレもな。」
エドワードが、ドサッと受付机のうえに麻袋を放る。
「これは……」
受付の女性はな顔を見て驚きの表情を浮かべた。
「ハングリーベアーですか!……しかも状態がいいですね。
こちらの換金は期待していいですよ!少々お待ちくださいね。」
そういうと袋をもって裏へと小走りで去っていった。
「ヤシャは冒険者登録とか……してないよな、多分。」
「えぇ。そうですね。あなたがたは冒険者、なんですよね。
……ところで冒険者というのは?」
そう疑問を口にすると、ガイは私の肩を抱きながら「さすが、ヤシャだな!」といい豪快に笑った。
「俺たちは冒険者だよ。こうやって魔物を狩って、依頼を達成したり魔物の部位を換金して生計を立てる。」
「なるほど……討伐、ですか。」
「そうだぜ。まぁ、危ない職業とも言えるが、腕が立てばいくらでも金は稼げるし、金が貯まれば早く上がって“平穏な生活”ってのも夢じゃねぇ。」
「平穏な、生活……!?」
冒険者、をやってお金を貯めれば“平穏な生活”のルートに
「おっ、ヤシャはスローライフに興味があるのか?
……まぁヤシャほどの強さがあれば引く手あまただろうし、正直ギルドや貴族、国が手放してくれなくなりそうだが……」
エドワードが何か苦笑しながら言っていたが、私の頭の中はたちまち“平穏な生活”に支配されていて、右耳から入り左耳からスルスルと抜けていった。
「……ります。」
「ん?」
「やります。やりたいです、冒険者。」
平穏平穏平穏平穏平穏
「平穏平穏平穏平穏平穏」
「ヤシャ……そんなにツラい生活をしてきたのか……?」
おっと、私の平穏への執着が見えてしまった様です。
「……こほん。えぇ、冒険者、というのは私の性に合っているかもしれませんし。何より、早く引退すれば平穏な生活がおくれるのですよね?」
「そうだな、まぁ……。そう、だな……。」
歯切れ悪く答えるエドワード。
その横からイワンがにゅっと顔を出す。
「ヤシャさんが冒険者になれば、魔物なんかバッサバッサですよ!お金もきっとたまります!ぜひ、やりましょうよ!」
「そうですね。それで、冒険者というのは名乗ればなれるのですか?」
そう言うと、エドワードは「君の無知には慣れたよ。」とニコニコわらいながら受付を指さした。
「そこで色々やって、登録する。今からするか?」
私は大きく頷いた。
「もちろんです。やりましょう、今すぐ。」
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