生徒会長と文学の目覚め

高校時代に生徒会長をしていた。


地元の進学校。普通の普通科。本当は通いたい高校があった。県内で一番の進学校。私が当時住んでいた地元には10%枠と呼ばれる制度があって、入試の点数が全体の上位10%に入れると校区外の高校を受けることができた。が、両親が受けることを許してくれなかった。下宿することをよく思われなかったらしい。


ということで通っていた地元の普通の普通科で私が生徒会長をしていたその根底には「寧ろ鶏口となるとも牛後となるなかれ」の考えがあった。トップ校で冴えない成績を残すくらいなら冴えない学校のトップを張ってやれ。すっぱい葡萄とも言うかもしれない。でも今一度思い返すとそれ以上の考えがあった気もする。


記憶を記録にしたかったのだ。


私が高校生であったことは記録として残っても、私が高校生である「この感じ」をずっと鮮明に記憶しておくことはできない。それでも高校生として生きる今この感じを忘れたくは無い。記憶できないのであれば記録する必要がある。私は私を記録するために生徒会長になる。


今も生徒会長をしていた私の写真が私の名前とともにネットに記録されている。無形の歴史を目に視えるものとして遺していく、文学の根底にある感覚を初めてきちんと意識したのはこのときだった気もする。

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私小説とエッセイの間 白井エフ @F_Shirai

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