生徒会長と文学の目覚め
高校時代に生徒会長をしていた。
地元の進学校。普通の普通科。本当は通いたい高校があった。県内で一番の進学校。私が当時住んでいた地元には10%枠と呼ばれる制度があって、入試の点数が全体の上位10%に入れると校区外の高校を受けることができた。が、両親が受けることを許してくれなかった。下宿することをよく思われなかったらしい。
ということで通っていた地元の普通の普通科で私が生徒会長をしていたその根底には「寧ろ鶏口となるとも牛後となるなかれ」の考えがあった。トップ校で冴えない成績を残すくらいなら冴えない学校のトップを張ってやれ。すっぱい葡萄とも言うかもしれない。でも今一度思い返すとそれ以上の考えがあった気もする。
記憶を記録にしたかったのだ。
私が高校生であったことは記録として残っても、私が高校生である「この感じ」をずっと鮮明に記憶しておくことはできない。それでも高校生として生きる今この感じを忘れたくは無い。記憶できないのであれば記録する必要がある。私は私を記録するために生徒会長になる。
今も生徒会長をしていた私の写真が私の名前とともにネットに記録されている。無形の歴史を目に視えるものとして遺していく、文学の根底にある感覚を初めてきちんと意識したのはこのときだった気もする。
私小説とエッセイの間 白井エフ @F_Shirai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私小説とエッセイの間の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます