第八章 いつか誰かを(ヒント編その3というかほぼ答え)
S「キラちゃん……中学時代には委員長として存在感を放っていたが同窓会で一度も登場していない……どうなってるんだ?」
V「あと風中くんが作った苗字と名前の対応表、全部間違ってるよ」
S「なにぃ!?」
V「タカシさんが将来への手紙を渡す時に出席番号順で渡した場面があったよね? あの場面で登場人物たちの苗字の「あいうえお順」が分かるの」
S「あーやっぱそうだよねーそんな気がしたわー」
V「手紙の受け取り順はユリさん→サヤカさん→モカさん→タカシさん→ユウヤさん→アリスさん→ショージさんという順番になる。まず最初に名前を呼ばれたのは有栖川さんだけど特に誰かが受け取る描写はない。だけどその後にユリさん以外のすべての参加者が受け取っている以上、有栖川はユリさんで確定」
S「ほうほう」
V「なのでこれを苗字のあいうえお順に対応させると」
有栖川ユリ、如月サヤカ、如月モカ、東雲ユウヤ?、東海林ユウヤ?、小鳥遊アリス、栗花落ショージ
余り 〇〇タカシ、〇〇繰人、〇〇キラちゃん?
S「だいぶスッキリしてきたな」
V「次にタカシさんの苗字を考えていくけど、こちらは簡単なの」
S「そうなの?」
V「第二章で町長の勅使河原氏の反対勢力代表の日下氏の差別的感情が家庭に広がったって書いてあったこと覚えてる? だからタカシさんは日下」
S「はぇ~」
V「そしてタカシさんの苗字が日下であることが分かればユウヤさんが東海林で確定する」
S「どうして?」
V「ユウヤさんの出席番号が6番だから。そうなると残りの東雲さんがキラちゃんで間違いない」
有栖川ユリ、如月サヤカ、如月モカ、日下タカシ、東雲キラちゃん、東海林ユウヤ、小鳥遊アリス、栗花落ショージ
S「すごいな。もうこんな完璧にまとめちゃって。で、主人公はどこに入るんだい?」
V「分からない」
S「えっ?」
V「東海林ユウヤさんが出席番号6番なのは確定しているので、それより後ろの読み方の苗字になるとは思うけど、そこで止まっちゃって」
S「それじゃぁどうするのさ」
V「とりあえず風中くんが間違った推理を三回して、部長のエネルギーを充てんするしかないよ」
S「え~無理だよ~」
V「そこは頑張ってよ。自宅部きっての直観型推理の使い手なんでしょ?」
S「うぅ……じゃ、じゃぁ実は双子ではなく三つ子で如月繰人だった!!!!」
P「zzz」
V「さっきの話を聞いてた? そうするとユウヤさんが出席番号6番じゃなくなっちゃうんだって」
S「6番より後ろだったら何でもいいのか。それなら勅使河原繰人!百目鬼繰人!!」
P「zzz」
V「それは何か根拠とかはあるの?」
S「ないです……もうネタ切れで一番酷い思いつきしか残ってないです……」
V「はぁ……試しにその一番ひどい思いつき言ってみてよ」
S「絶対怒らない?」
V「怒らない怒らない」
S「……そもそもこの主人公に名前なんて設定されてないんだ」
V「へ?」
S「だから俺たちが必死に考えても、解けるはずがない問題だったんだ」
V「何言ってるの?」
S「俺がここでそれっぽい苗字を順番に呼んだとしても、いつか誰かを納得させる答えには繋がらない。発想を最初からひっくり返すんだ」
V「どこをひっくり返すの?」
S「主人公という存在」
V「どういうこと……?」
S「簡単に言うね。中学校編での『僕』と同窓会編での『僕』は別人ってことさ」
V「えっ」
S「叙述トリックってことだよ。そして同窓会編での『僕』が別人だとして、フルネームで名前を指摘できる人物だとしたらそれは一人しかいないよね」
V「ま、まさか」
S「うん、東雲キラ。これが同窓会編での『僕』であり、第二の主人公であり犯人だよ。名前もKillerだしね」
V「な、なんだってー!?」
P「な、なんだってー!?」
V「あ、部長起きたんだ」
P「あぁ、おはよう。気持ちよく寝ていたら、とんでもない珍説が聞こえて慌てて起きてしまったよ。でも大丈夫だ。おかげで僕のひらめきパワーが溜まったようだ」
S「珍説……」
P「仮にそんな叙述トリックをするからには、同窓会での『僕』は女性なんだろう?」
S「もちろんそうだよ」
P「なんで成り済ます相手がショージだったんだ? 男性じゃないか」
S「おいおい、起きたばっかりで寝ぼけてるのか? ショージって名前の女の子がいたっていいだろ。名前で決めつけるのは偏見だしそれは推理の否定にはならないぞ」
P「それなら真面目に否定しようか?ショージが男性であるのは間違いないんだ。新聞記事を見てくれ。男子生徒二人と女子生徒五人が並んでるって書いてあるだろ。栗花落ショージは一番端っこにいる。東雲はその反対側にいる。そして合唱コンクールという都合上、ソプラノ、アルト、テノール、バスの各パートは固まっているはずだ。栗花落ショージを女性にすると他の人の性別も変わる。如月姉妹が男性になったらおかしいだろう?」
S「こんな妄想推理にもちゃんと否定できる根拠あるのかよ……うげぇ」
P「君も頑張ったとは思うよ」
S「で、ここまで色んな説を出してきたけど、ペガっちはもっと納得できる推理あるんだろうな?」
※※※ここから最後の推理です※※※
P「もちろん。だけど僕もある前提を壊すことになる。キラちゃんは何でも一番だったよね?」
S「あぁそうだ。勉強でもスポーツでも見た目の人気でも出席番号順でも……あれ?」
P「そうだ。キラちゃんは出席番号1番なんだ。それがどういうことか分かるかい?」
S「キラちゃんの苗字は有栖川ってこと?」
P「いや、違う。有栖川がユリなことはマチくんが証明済みだ」
S「それだったらおかしいじゃないか。『しののめ』はどうやったって出席番号1番にはならないぞ」
P「その名前を『しののめ』と読んでる限りは1番にはならないだろうね」
S「えっ、それはつまり」
P「そういえば君は、キラちゃんの漢字表記を考えたことがあるかい?」
S「漢字表記? そんなの『きらめき』の煌(キラ)だろ?」
P「それも「きら」と読むが、恐らく彼女の名前は雲母(きらら)だよ」
S「なっ」
P「そして名前が雲母だと考えると、ある可能性が見えてくる」
S「東雲という苗字じゃなくて……東・雲母(あずま・きらら)ってことか!!」
P「そうだ。ちなみに名前の一文字だけを切って表示する理由は何か考えられるい?」
S「同じ苗字の人がいる場合……まさか」
P「そう。主人公の苗字も『東』という漢字なのだろう」
S「なるほど……いや、それはおかしい。だって主人公も東だったらユウヤの出席番号が変わってしまう」
P「もし……主人公の方は読み方が違ったら?」
キラちゃんと出会ったのは小学生の時だ。
初めて同じクラスになって出席番号順に並んだ時、僕のいる席が間違っていると話しかけてきたのが始まり。
結局、それはキラちゃんが僕の名前を読み間違えているだけだったのだけど、そこから奇妙な縁かよく喋る間柄になった。
P「何故、主人公の席が間違ってると思った? それは同じ漢字だから同じ読みだとキラちゃん自身が思ったからじゃないか?」
S「あっあっ」
キラちゃんは僕のことを「ひーくん」と呼ぶ。
親が付けてくれた名に「ひ」は入っていないので、ひーくんと呼ぶのは彼女だけだ。
P「何故彼女は繰人のことを『ひーくん』と呼ぶんだ? それは同じ漢字なのに読み方が違うことが出会いだったからじゃないか?」
S「ひぃ」
P「もう分かったよな。つまり『僕』のフルネームは――」
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