第七章 織りなす布は(ヒント編その2)
S「よし、完成した!」
P「見せてくれ」
S「一応、出席番号順に並べてみたぞ」
有栖川アリス、如月サヤカ、如月モカ、東雲ユウヤ、東海林ショージ、小鳥遊タカシ、栗花落ユリ
P「なんだこれ?」
S「ふっふっふ。今日の俺は名探偵かもしれん。登場人物たちの名前を見てひらめいてしまったのさ。やたら苗字と名前の響きが似てるやつが多すぎるってね」
P「お、おう……それでショージショージとかツユリユリとかアリスガワアリスとかって名前にしたのか。そんな名前のやつがいるわけないだろ。親はどういう神経してるんだよ」
S「有栖川有栖は実在するから……」
P「それに、そんな命名ルールがあるとしたらユウヤはどうなるんだ?」
S「それは……そのぉ……」
P「そしてこれが解けたところで犯人は分かるのか?」
S「そ、それは大丈夫だよ。あの記事は合唱コンクールの時にいたメンバーが書かれてる」
P「つまり?」
S「一人だけ、その日体調を崩して休んでる人がいるよね?」
P「あぁ、いたな」
S「それが作中でタカシと呼ばれていた男。つまり、そいつの名前が記事に載っているのはおかしい! だからタカシって名前の人間はクラスにもう一人いて主人公の名前もタカシだった。つまり犯人の名前は小鳥遊タカシだ!!これでリーズニットだぜ!!!」
P「思うんだが、主人公はそもそも合唱コンクールに参加して無いんじゃないか?」
S「は?」
P「いや、第二章で君はこのまま学校には居られないって話をしてたじゃないか。そして二学期からの生活を校長から何らかの提案をされている。そして二学期からクラスの新たな一員としてナパットが交換留学生としてやってきている」
S「ま、まさか!」
P「そう“交換”留学生だよ。A国からナパットが来るのと入れ替わりで、日本からA国に飛んだ生徒が一人いる。それが主人公なんじゃないか?」
S「わ、分かったぞ! A国に現れたコラウィットこそが犯人で『僕』なんだ!これが解答だ!リーズニットだぜ!!!」
P「ほう」
S「おそらく一度交換留学に行った時に魔女の存在を知ったんだろうな。ほら、魔女の城に子供の姿が見えると噂された時があっただろ。あれが交換留学の時のコラウィットだったんだ。そして大人になってからコラウィットは再びA国にやって来た。そしてマホガニで巨万の富を築いた。主人公が一本五百万円ほどのは高級酒『ちくわ五十年』を持ってくることが出来たのもそういうことだったんだ」
P「確かに、コラウィットの正体は主人公だったんだろう。だが推理としては間違っている。そもそもコラウィットは偽名だと書かれているしな」
S「ですよねー」
P「だがありがとう。君が三回間違えてくれたおかげで僕のひらめきパワーが溜まってきたようだ。僕の脳内で織りなす布はある答えを導き出しているよ」
S「つ、ついにひらめき推理が飛び出るのか!?」
P「あぁ……なんでこの可能性を考えてなかったのだろう。日本から海外への交換留学生ということは彼は“日本人”なんだよ。彼はちょっと外国人っぽい濃い顔立ちをしているだけのただの日本人なんだ……そして、この物語の舞台設定は西暦何年か分かるかい?」
S「えーっと、去年までコロナ禍で同窓会が出来なかったと言っているから2022年かな?」
P「そうだ。コロナウィルスが五類に引き下げられた2022年だ。そして卒業から15年ぶりの再会になっている。ということは合唱コンクールが行われた年は2007年だったはずだ」
S「そうだな」
P「だとすると、妙なことが一つ発生する。君はクルド人問題というのを知っているかい?」
S「あ、あぁ。一応ニュースでチラっと見たぐらいには」
P「そうだ。それでその問題をいつから知ってた?」
S「えっ、いやぁ、そこまではちょっと……」
P「それまでにも在日クルド人はおり少なからず何らかの問題はあったのかもしれないが、爆発的に増えてニュースなどで取り上げられ問題として叫ばれて日本国民に広く知られるようになったのは、2014年に就任したエルドアン大統領がクルド人たちが住む居住地を空爆して世界各国に難民として散らばった2010年代以降だろう」
S「ってことは、ちょっと待ってくれ。これ第一章で言われてるクルドってまさか」
P「そう。ただの本名だろうね」
S「な、なんだってー!?」
P「『運命の糸を自分で手繰り寄せる人間になりなさい』という願いを込めて名付けられたんだから、名前は『繰人』と書いて「くるど」くんなのだろう」
S「それなら作中で言われてるクルドの血も別に民族的な意味合いは何もなくて」
P「ただ暴力で発生した繰人くんの出血を指している。それだけなんだ。第一章を読んであぁクルド人だなと連想してしまうのは2020年代以降の人間特有の差別意識なのかもしれないね」
S「なるほどなぁ……それで繰人くんの苗字は何なんだい?」
P「今の推理でひらめきパワーを使い果たしてしまったようだ。さっぱり分からないし、僕はエネルギー充填するまで寝るよ」
S「なんだよそれ。結局フリダシに戻ったのかよぉ。ねぇマチちゃん、なんかひらめかない?」
V「あの……いま、登場人物表を作ってて不思議に思ったことがあるんだけど言っていい?」
S「良いよ良いよ。もう今は何の手掛かりも無いんだから」
V「それなら言うね……キラちゃんって誰なんだろう?」
S「……あっ」
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